残酷な描写あり
R-15
魔道具のスペシャリスト
犬獣人が持っていた金属製の急須のようなものを見て首を傾げる。
「話は全部聞いていたけれど、差別用語は頂けないね。キミのお父さんはそんなにすごいヒト?」
「部外者は黙れよ!俺の父様は町の大地主なんだぞ!」
「……?この国に地主の制度はなかったと思うけど?孤児院とかの経営権を持ってるとかならわかるけど」
「土地を持ってるんだから同じだろ!」
「そりゃ違うでしょ。そもそも土地は近衛師団が厳密に管轄しているはずだし、【契約】魔法で他人に土地は貸せないんだよ?それも分からない?」
どんどんと理詰めをする男性に対し、明確な答えが出せなくなってきたハウルは牙を剥き出しにしながら叫ぶ。
「部外者の癖してヒトに意見するな!父様が黙ってないぞ!」
「……孤児院の経営権……そうか!キミの父親はシャウトか!うちの得意先だね。お父様にはいつも魔道具を注文してもらってるから知ってるよ?……どうする?オイラが取引辞めるって言ったら孤児院は回らなくなるけど、キミが嫌ならやめてあげようか?」
それは実質孤児院の経営ができないということであり、ハウルはおとなしくなる。
男性は急須の先を傾け、ハウルに向かって注ぐ様にすると白い靄が降り注がれる。
すると、見る見るのうちにハウルの身体の力が戻っていき、魔法による力の没収は終わったようだった。
「……チッ」
二人に舌打ちをして取り巻きと共に競技場前から去っていく。
あまりの手際にレンは見惚れていると、男性は急須をカバンにしまい、立ち上がる。
「キミ、オイラの講義を受けにきたんでしょ?早く入りなよ」
「えっ!?も、もしかしてポチおさんって……」
「オイラだよ」
レンの中で理想のポチお像は瞬く間に崩れ去ったのだった。
もちろん完全に期待していたわけではなく、本当にその辺りにいる犬獣人の男性と変わらないのだ。
全然凄そうに見えないポチおに落胆したが、魔道具の使い方で熟練者であると分かったため、渋々講義を受ける事にしたのだった。
会場に入ると人の数が競技場の広さと一致せず、ガラガラだった。
その事もあり、レンは余計に不安になってしまう。
魔道具はいくらマイナーなジャンルとはいえ、流石に人数が少ないと思ってしまった。
ポチおはそのまま壇上に上がり、ポケットから小さい箱のようなものを取り出し、口に当てる。
「えー……うん。起動してるな。みんな、待たせてすまないね。それじゃあ特別講義に入らせてもらうよ?あ、オイラはポチお。よろしく」
長々とした挨拶や自己紹介もなく、サラッと始まった講義にレンは集中して聴く事にした。
(きっとこのヒトはサクサクと進むタイプだ……!聴き逃さないようにしないと!)
「それじゃあ、まずは魔道具についてなんだが……そこのネズミ君。どんな印象かな?」
突然指名されたネズミ族の男子は周りを見ながら恐る恐る立ち上がる。
「え、えっと……魔力があれば使えない魔法も使える……みたいな?」
「そうだね。厳密には魔道具に入れ込んだ魔法を起動させるために魔力が必要になる。対応した魔道具さえ持っていれば適正魔法関係なく発動できる特性がある。では、魔道具の短所は?そこの鳥の女の子」
「は、はい!入っている魔法しか使えないことと、強い魔法が入った魔道具は大型になっているから持ち運べない所です」
「ご名答。戦闘用魔道具というものが存在するけど、魔獣用に使うやつは大きくて扱いにくいね。小さな魔道具には小さな魔法しか入れられない。日々研究はしているんだけれど物理的に難しい状態、というのが現状だ」
ここまではレンでも知っている情報であり、少し歯応えがなく感じた。
他の受講生も同じように感じたのか、少し不安そうな顔をする。
それを見たポチおは困ったように眉を下げ、黒い棒を取り出す。
一般的な魔道具は家具のような見た目であり、知っているヒトでなければ魔道具と見破れない程精巧に作られている。
しかし、目の前にある黒い棒はこれまでの常識を覆すものだと感じた。
「気になるでしょ?コレ、魔法の入ってない魔道具なんだよ。あ、ウソついた。一応魔法は入ってるんだけど、少し変わっているんだ。……それじゃあ、そこの茶ネコ君。こっちおいで?」
レンが指名された。
急なことで驚き、硬直したが、ポチおが手招きしているので小走りで向かう。
そして、ポチおは黒い棒をレンに手渡す。
見た目と長さから重たいものだと想定していたが、非常に軽く、金属質の手触りであった。
「こ、これってミスリル……!?」
「お?詳しいねぇ。ミスリル素材の魔道具だよ。この魔道具に魔力を……キミなら半分くらい必要かな?注ぎ込んでごらん?」
レンはポチおに言われるまま魔力を込めていくと先端から光が溢れ、ポチおの見立て通り半分の量を注ぎ込むと水色の刀身が現れる。
半透明の刀身は対面にいるポチおを映し出すほどの透明度である。
薄さと鋭さ、無駄のないデザインの刀身に感動していると、何処からともなく硬めの草を束にしたものを取り出し、設置していた。
ポチおが「振ってみな?」というジェスチャーをしていた為、レンは草の束に向かって刃を振り下ろした。
刃は水を切るように無抵抗であり、剣術の心得のないレンでも簡単に切り倒した。
「す、すごい切れ味……!?」
「凄いでしょ?調査隊のメンバーはみんなコレを持って活動を行なってるんだ。興味出たでしょ?さ、戻って」
レンは調査隊が実際に使っているという魔道具を触れたことで更に調査隊への憧れが増えていくのだった。
「話は全部聞いていたけれど、差別用語は頂けないね。キミのお父さんはそんなにすごいヒト?」
「部外者は黙れよ!俺の父様は町の大地主なんだぞ!」
「……?この国に地主の制度はなかったと思うけど?孤児院とかの経営権を持ってるとかならわかるけど」
「土地を持ってるんだから同じだろ!」
「そりゃ違うでしょ。そもそも土地は近衛師団が厳密に管轄しているはずだし、【契約】魔法で他人に土地は貸せないんだよ?それも分からない?」
どんどんと理詰めをする男性に対し、明確な答えが出せなくなってきたハウルは牙を剥き出しにしながら叫ぶ。
「部外者の癖してヒトに意見するな!父様が黙ってないぞ!」
「……孤児院の経営権……そうか!キミの父親はシャウトか!うちの得意先だね。お父様にはいつも魔道具を注文してもらってるから知ってるよ?……どうする?オイラが取引辞めるって言ったら孤児院は回らなくなるけど、キミが嫌ならやめてあげようか?」
それは実質孤児院の経営ができないということであり、ハウルはおとなしくなる。
男性は急須の先を傾け、ハウルに向かって注ぐ様にすると白い靄が降り注がれる。
すると、見る見るのうちにハウルの身体の力が戻っていき、魔法による力の没収は終わったようだった。
「……チッ」
二人に舌打ちをして取り巻きと共に競技場前から去っていく。
あまりの手際にレンは見惚れていると、男性は急須をカバンにしまい、立ち上がる。
「キミ、オイラの講義を受けにきたんでしょ?早く入りなよ」
「えっ!?も、もしかしてポチおさんって……」
「オイラだよ」
レンの中で理想のポチお像は瞬く間に崩れ去ったのだった。
もちろん完全に期待していたわけではなく、本当にその辺りにいる犬獣人の男性と変わらないのだ。
全然凄そうに見えないポチおに落胆したが、魔道具の使い方で熟練者であると分かったため、渋々講義を受ける事にしたのだった。
会場に入ると人の数が競技場の広さと一致せず、ガラガラだった。
その事もあり、レンは余計に不安になってしまう。
魔道具はいくらマイナーなジャンルとはいえ、流石に人数が少ないと思ってしまった。
ポチおはそのまま壇上に上がり、ポケットから小さい箱のようなものを取り出し、口に当てる。
「えー……うん。起動してるな。みんな、待たせてすまないね。それじゃあ特別講義に入らせてもらうよ?あ、オイラはポチお。よろしく」
長々とした挨拶や自己紹介もなく、サラッと始まった講義にレンは集中して聴く事にした。
(きっとこのヒトはサクサクと進むタイプだ……!聴き逃さないようにしないと!)
「それじゃあ、まずは魔道具についてなんだが……そこのネズミ君。どんな印象かな?」
突然指名されたネズミ族の男子は周りを見ながら恐る恐る立ち上がる。
「え、えっと……魔力があれば使えない魔法も使える……みたいな?」
「そうだね。厳密には魔道具に入れ込んだ魔法を起動させるために魔力が必要になる。対応した魔道具さえ持っていれば適正魔法関係なく発動できる特性がある。では、魔道具の短所は?そこの鳥の女の子」
「は、はい!入っている魔法しか使えないことと、強い魔法が入った魔道具は大型になっているから持ち運べない所です」
「ご名答。戦闘用魔道具というものが存在するけど、魔獣用に使うやつは大きくて扱いにくいね。小さな魔道具には小さな魔法しか入れられない。日々研究はしているんだけれど物理的に難しい状態、というのが現状だ」
ここまではレンでも知っている情報であり、少し歯応えがなく感じた。
他の受講生も同じように感じたのか、少し不安そうな顔をする。
それを見たポチおは困ったように眉を下げ、黒い棒を取り出す。
一般的な魔道具は家具のような見た目であり、知っているヒトでなければ魔道具と見破れない程精巧に作られている。
しかし、目の前にある黒い棒はこれまでの常識を覆すものだと感じた。
「気になるでしょ?コレ、魔法の入ってない魔道具なんだよ。あ、ウソついた。一応魔法は入ってるんだけど、少し変わっているんだ。……それじゃあ、そこの茶ネコ君。こっちおいで?」
レンが指名された。
急なことで驚き、硬直したが、ポチおが手招きしているので小走りで向かう。
そして、ポチおは黒い棒をレンに手渡す。
見た目と長さから重たいものだと想定していたが、非常に軽く、金属質の手触りであった。
「こ、これってミスリル……!?」
「お?詳しいねぇ。ミスリル素材の魔道具だよ。この魔道具に魔力を……キミなら半分くらい必要かな?注ぎ込んでごらん?」
レンはポチおに言われるまま魔力を込めていくと先端から光が溢れ、ポチおの見立て通り半分の量を注ぎ込むと水色の刀身が現れる。
半透明の刀身は対面にいるポチおを映し出すほどの透明度である。
薄さと鋭さ、無駄のないデザインの刀身に感動していると、何処からともなく硬めの草を束にしたものを取り出し、設置していた。
ポチおが「振ってみな?」というジェスチャーをしていた為、レンは草の束に向かって刃を振り下ろした。
刃は水を切るように無抵抗であり、剣術の心得のないレンでも簡単に切り倒した。
「す、すごい切れ味……!?」
「凄いでしょ?調査隊のメンバーはみんなコレを持って活動を行なってるんだ。興味出たでしょ?さ、戻って」
レンは調査隊が実際に使っているという魔道具を触れたことで更に調査隊への憧れが増えていくのだった。