残酷な描写あり
冥王vs魔宰相
かき消えたように見えた冥王はオカ=メギルの面前に現れ、右足で踏み込み、右手でオカ=メギルの腹に掌底を放つ。
ーー圧縮された濃密な魔力! これを食らえば終わりでゴザル!
オカ=メギルは左足を軸に時計回りに回転し、冥王の魔力が込められた掌底を躱す。
ーー再生能力にかまけて防御を疎かにする方ではないようですねえ。
そう冥王が感じた時、冥王の眼前にオカ=メギルが纏っていた衣服が広がる。
ーー冥王殿! お覚悟でゴザル!
オカ=メギルは本性のスライムの姿を現し、体を錐状に変化させ、冥王の左足の太腿を狙う。
しかし。
「ホホホ。狙いは良かったですが、相手が悪かったですねえ」
瞬時に冥王はオカ=メギルの体を掴んでしまった。
「『冥震』」
オカ=メギルを掴んだ手から魔法が放たれ、オカ=メギルの体は小刻みに震え、砂粒ほどの破片となってぼたぼたと落ちていく。
「魔宰相オカ=メギル……。その名に恥じること、ただの一つもないですねえ。堪能させて頂きましたよ」
ーーくっ、拙者の体よ、結合するでゴザル!
オカ=メギルは破片となった体を結合させようとするが、何も起こらない。
「ホホホ。ムダですよ。ワタシの冥魔法には回復阻害の効果がありますからねえ。たとえアナタの回復能力が『ちーとすきる』であったとしても、しばらくはかかるでしょうねえ」
ーーそれにしても……。宰相サンの身のこなし……。『外つ国』の者たちが使う『くんふー』とかいうモノに似ていましたねえ。それが咄嗟に出てくるとは……『てんせいしゃ』とかいうヤツで間違いないでしょうねえ。
幾度となく行われた大戦において、勇者や大賢者と並んで魔族たちの障害となったのは、この世界の理から外れた『てんせいしゃ』たちだった。彼らは人間たちの技術力を上げ、戦力を増強させるのに一役買い、魔族の敗北の要因となった。
ーー最近は人間以外にもいるようになりましたが……。宰相にまでなっているとは驚きですねえ。
『てんせいしゃ』の厄介さは冥王は身に染みて理解している。世界の根幹に関わる影響を及ぼす者まで存在するからだ。それが魔王の配下にいることに冥王は少しの安堵も感じるのだった。
◇◆◇
会議室にいる魔族たちは慄然とする。まず、絶大な回復能力はあっても、戦闘能力は皆無と思われていたオカ=メギルが冥王の初撃を躱した上で攻撃に転じたこと。次に、四元魔将たちの攻撃を受けても瞬時に回復することができるオカ=メギルが回復しないこと。そして、自分たちは冥王を前に身動きすらできなかったにも関わらず、オカ=メギルはあれだけの立ち回りをしてのけたからだ。
「無念でゴザル……」
苦悶の声を上げるオカ=メギルを見て、魔王がゆっくりと立ち上がる。
「冥王。我が宰相にこれだけのことをして、ただで帰れるとは思っていまいな?」
「ホホホ。当然でしょう。アナタはそうしてくれるようなビビりではないですからねえ」
魔王の纏う空気が血沼のような色に変わる。そして、背中に六対の黒翼が現れる。これは魔王リュツィフェールが全力で戦闘を行うときに現れるものだ。
「久しぶりに本気で相手をしてやろう。『二股の矛』も『剣』もないお前がどれほどのものか見物だな!」
「ホホホ。遠慮ぜずに災いを呼ぶものを使って頂いても構わないのですよ!」
二人の魔力は示し合わせたように上方に向けて膨れ上がり、天井を吹き飛ばす。そして二人は上空に飛び立ち、戦いが始まるのだった……。
ーー圧縮された濃密な魔力! これを食らえば終わりでゴザル!
オカ=メギルは左足を軸に時計回りに回転し、冥王の魔力が込められた掌底を躱す。
ーー再生能力にかまけて防御を疎かにする方ではないようですねえ。
そう冥王が感じた時、冥王の眼前にオカ=メギルが纏っていた衣服が広がる。
ーー冥王殿! お覚悟でゴザル!
オカ=メギルは本性のスライムの姿を現し、体を錐状に変化させ、冥王の左足の太腿を狙う。
しかし。
「ホホホ。狙いは良かったですが、相手が悪かったですねえ」
瞬時に冥王はオカ=メギルの体を掴んでしまった。
「『冥震』」
オカ=メギルを掴んだ手から魔法が放たれ、オカ=メギルの体は小刻みに震え、砂粒ほどの破片となってぼたぼたと落ちていく。
「魔宰相オカ=メギル……。その名に恥じること、ただの一つもないですねえ。堪能させて頂きましたよ」
ーーくっ、拙者の体よ、結合するでゴザル!
オカ=メギルは破片となった体を結合させようとするが、何も起こらない。
「ホホホ。ムダですよ。ワタシの冥魔法には回復阻害の効果がありますからねえ。たとえアナタの回復能力が『ちーとすきる』であったとしても、しばらくはかかるでしょうねえ」
ーーそれにしても……。宰相サンの身のこなし……。『外つ国』の者たちが使う『くんふー』とかいうモノに似ていましたねえ。それが咄嗟に出てくるとは……『てんせいしゃ』とかいうヤツで間違いないでしょうねえ。
幾度となく行われた大戦において、勇者や大賢者と並んで魔族たちの障害となったのは、この世界の理から外れた『てんせいしゃ』たちだった。彼らは人間たちの技術力を上げ、戦力を増強させるのに一役買い、魔族の敗北の要因となった。
ーー最近は人間以外にもいるようになりましたが……。宰相にまでなっているとは驚きですねえ。
『てんせいしゃ』の厄介さは冥王は身に染みて理解している。世界の根幹に関わる影響を及ぼす者まで存在するからだ。それが魔王の配下にいることに冥王は少しの安堵も感じるのだった。
◇◆◇
会議室にいる魔族たちは慄然とする。まず、絶大な回復能力はあっても、戦闘能力は皆無と思われていたオカ=メギルが冥王の初撃を躱した上で攻撃に転じたこと。次に、四元魔将たちの攻撃を受けても瞬時に回復することができるオカ=メギルが回復しないこと。そして、自分たちは冥王を前に身動きすらできなかったにも関わらず、オカ=メギルはあれだけの立ち回りをしてのけたからだ。
「無念でゴザル……」
苦悶の声を上げるオカ=メギルを見て、魔王がゆっくりと立ち上がる。
「冥王。我が宰相にこれだけのことをして、ただで帰れるとは思っていまいな?」
「ホホホ。当然でしょう。アナタはそうしてくれるようなビビりではないですからねえ」
魔王の纏う空気が血沼のような色に変わる。そして、背中に六対の黒翼が現れる。これは魔王リュツィフェールが全力で戦闘を行うときに現れるものだ。
「久しぶりに本気で相手をしてやろう。『二股の矛』も『剣』もないお前がどれほどのものか見物だな!」
「ホホホ。遠慮ぜずに災いを呼ぶものを使って頂いても構わないのですよ!」
二人の魔力は示し合わせたように上方に向けて膨れ上がり、天井を吹き飛ばす。そして二人は上空に飛び立ち、戦いが始まるのだった……。