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作者: konoyo
R-15
しゃくれのせいで手が振れない
三人で歩いて中学まで向かった。あたしが通う中学校は小学校の少し先、五分程しか離れていない場所にあるので通い慣れた道を歩いて行く。だから、あまり新鮮な感じはしなかったかな。制服がもっと似合っていれば随分気分も違ったのだろうけど。中学校に着いて校門をくぐるときだけ少し気が引き締まったかな。

 案内の看板を頼りに進んで行くと大きな掲示板にクラスの名簿が張り出されてあった。一年三組にあたしの名前があった。もう一度、三組の名簿を上から見直してみる。あった。果歩ちゃんの名前。そして亮君の名前も。これはついている。また大好きな友達と、気になる亮君と同じ教室で過ごすことがかなうのだ。よくよく名簿を見てみるとクラスの半分近くは同じ小学校に通っていた人だった。なんだかとても安心したね。
 
 ここで一旦お母さんと岳人とはお別れ。ふたりは体育館で待機する。あたしは案内の看板や先生の誘導で一度教室に入る。迷うことなどなく一年三組の教室まで辿り着いた。机にはそれぞれネームプレートが貼られているので、自分の席を探して座った。教室はまだ半分も埋まっていない。果歩ちゃんも亮君もまだ来ていない。席が埋まるごとに教室内の緊張感が高まっていく。あまりお喋りをしている人もいなかった。

亮君が教室に入ってきた。みんなと同じように机をひとつひとつ確認して自分の席を探している。あたしは、当然話しかけることなどできやしない。意気地なし。そのすぐ後に果歩ちゃんが入ってきた。彼女は教室に入ってあたしを見つけるなり、大きな声であたしの名を呼んで抱きついてきた。やっぱりこの子は他の人とは違うなあ。もちろん褒め言葉だよ。

 まあ、よく喋る(笑)。教室中の視線をひとり占めだよ。自分の席を探そうという気がないもんね。だけどね。彼女の口から出る言葉はあたしを元気づけるものばかり。ありがとうね。一緒のクラスになれてとても心強いよ。間違いなく楽しい一年になるね。

 教室の前の扉が勢いよく開いて背の高い男の先生が入ってきた。果歩ちゃんは慌てて自分の席に着いた。席を探す必要なんてない。だって、空いている席はひとつしかないのだもの。目が細くて、顎のしゃくれた先生は怖そうな人だった。

「これから体育館に移動します。わたしについて来てください。」

 生徒達はしゃくれた先生の後ろに並んで移動する。この先生が怖いと感じたのはみんな一緒だったのであろう。列も乱さずに、お喋りする者もいない。そのくらいこの先生は独特の雰囲気を漂わせていた。

 体育館の中の保護者席の一番前にお母さんと岳人が座っている。あたしを見つけた岳人は笑いながら手を振っていた。だけど、怖い先生に見つかりたくないので手を振りかえしてあげることができなかった。ごめんね、岳人。あたしが目の前を無言で通り過ぎても手を振り続けているから、なんだか可哀想で申しわけなくてたまらなかった。先生のことが憎らしいくらいにね。なんでこんな人が担任になるのだろう。もうこの時点でこの先生に対する印象は最悪だった。

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