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作者: konoyo
R-15
儀式ばかりの大人たち

 一時間程の入学式はとても退屈だったけど、式の引き締まった感じが心地よかった。これから新しい生活が始まる。それは不安ではなく期待の方が大きかった。周りと見渡すと新入生はみんな同じような顔をしている。あたしよりずっとかしこまった顔色をしている。あたしにはそんな表情は作れないな。ずっと緊張した毎日を生きてきたのだ。やっと近頃その緊張感から放たれたのだ。誰もが気が緩む時間と、穏やかでない時間を交互に繰り返しているのだ。あたしだけが苦しむわけではない。みんなもあたしと同じだし、あたしもみんなと同じなのだ。あたしも普通の中学生、子供なのだ。そう信じられたことがこの日一番の収穫だ。

 式が終わって体育館を退場するときに、お母さんと岳人の前を通る。相変わらず屈託のない笑顔で身を乗り出す弟にちょっとだけ手を振り返せたよ。

 怖そうな先生に見つからないでよかった。これで弟もわざわざつまらない集まりに出席した甲斐があったと満足してくれるだろう。

 入学式の後はクラスごとに別れて簡単なオリエンテーションを行う。それもまったく下らなかった。ある程度予想はしていたけど、社会とは大人になるほど儀式が多くなるようだった。無駄な時間が増えるのだ。付き合わせられる子供の気持ちになってくれ。そんな不満を持っていたのはあたしだけではないらしい。 

 先生の話が終わったら誰ひとり先生に挨拶をすることもなくそれぞれ教室を出て行った。これが子供なりの抵抗なのだ。

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