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作者: 犬物語
はだし、きんし、ペスト、おうべいか
タンスの角に小指
落下物に潰される
画鋲を踏み抜く

裸足は何かと苦労するよね
 キミはいま、ファミレスでおいしいハンバーグを食べてる。

 熱々の肉汁。そこから湧き出る煙と芳醇な香り。フォークを指して口元に運び、類まれなる食感と味、キミの脳は喰らえ喰らえと歯と舌を動かすことだろう。

 そこに事件が起こった。
 だれかが叫んだ。
 キッチンにネズミが出たと。

 キミの食欲はどこに向かうだろう? もしかしたらネズミが触れたかもしれないハンバーグを投げ捨てるか、あるいは「火ぃ通ってるしヘーキヘーキ」と構わず頬張り続けるか……いずれにしても、良い気分のままではいられないだろう。

 ネズミそのものも去ることながら、ネズミにくっついた病原菌やウイルスは非常にヤバい。そんなものを放っとけばそれこそ大感染症時代の幕開けである。現代では考えられない環境だよね。

 現代では、ね……日本は明治維新やらなにやらまで絶賛鎖国カントリーだったわけでして、それまでは現代の常識からは考えられない生活スタイルだったんです。だからこそネズミさんは当たり前に人とごいっしょしてたし、ネズミを駆除する猫にゃん犬わんたちも大活躍してた。

 とはいえ、江戸時代終盤にペリーさんが「かいこくしてくださーいよぅ」言うてきてね? んで当時の日本人は世界を見て「やっべ日本遅れてんじゃん! なんとかせねば」思いましてね? いろいろな施策を講じてきたわけです。今回はそのなかの一つを紹介しようと思ってるんだけど、どメジャーな情報はあちこちで紹介されてるし、それだとつまんないというか「他媒体でも読めるしそっちで読めばよくね?」なんて言われそうだから、今回は少しばかりマイナー情報を扱ってみたいと思います。

 たとえば『はだし禁止令』とか。





:東京のみなさん! はだしはダメだよ!:

 ほんの百五十年前までは、ジャパニーズさんけっこー裸足で出歩いてたらしいッスよ?

 江戸時代は草履や下駄が主流。足袋もあったけどあれは高級品だから金持ち用でございまして、そもそも何も履かず裸足で出歩くなんてこともままあった。

 あの時代、どこでも野良犬やらが野グソしてたろうし荷や人を乗せたウマやらウシもいただろうに……今じゃ考えられないけど、まあ当時の地面は砂場だしゴミもコンクリートの破片なども凸凹した石とかもそんななかったと思うので、まあ何か踏み抜いてケガした! なんてことは少なかったでしょう。

ウイルス「そういう生活のほうが我々も助かります」
細菌「どうぞそのままの日常を送っていただければと思います」

 そりゃぁ感染症が流行るわけだ。いくら昔とはいえ何をどうして感染症が流行るかはわかってたじゃん? だから、当時のお国や衛生を気にするエラい方々にとっては問題視されていたでしょう。あるいは、明治時代の流れに沿って欧米各国に恥じぬ様相でありたい、と思ったかもしれない。

 真実はどうあれ、明治三四(1901)年の五月二九日。警察庁はこのような命令を発令しました。

警察「ペスト予防したいから、東京市内は〝はだし禁止〟な! 違反したら勾留か科料になるから気をつけろよ!」

 東京〝市〟があった時代の話だね。警察庁の東京府広報にて交付された第四一号の命令だそうですが、ソース確認しようとしたら国立国会図書館のネットサービスだと明治三八年までの情報しか遡れず、当時の旧刑法もe-Gov法令検索では断片しか記載されてないらしい。しゃーなしにWikipediaのやつだけ確認したら、上記を違反した際の罰則は『刑法第四二六条、四項』に記されてました。

警察「健康を保護するための規則だから破るなよ! 破ったら二日 ~ 五日の勾留か、または五十銭 ~ 一圓五十銭以下の科料だからな!」

:Wikipedia:
ttps://ja.wikisource.org/wiki/刑法_(明治13年太政官布告第36号)


 主たる目的は感染症予防。なんか東京帝国大学の構内に死んだネズミがいて、そいつからペスト菌が発見されちゃったみたいでね? ――ペストはノミや野生動物に噛まれたり、あるいは肺ペストだと飛沫感染で他者に伝染る病気だから裸足かどうかはあまり関係なかったりするんだけど、当時は対処できるなら何だってしたい時代だからね。

 ちなみにという話。ペスト対策とは別に、お国として欧米化の流れを目指したのではないか? という説もある。裸足で出歩くなんてはしたない! 的な価値観を日本全国に広めていき、実際新聞などでも積極的に情報発信していったそうだ。べつにオーストラリたとかニュージーランドでも裸足スタイルふつーだよ的な例あるけど、まあ当時のジャパニーズは近代化したかったので、ええ。

 いずれにせよ、この日からジャパンの東京市では裸足禁止となりました。





:はだしがダメなら下駄を履けばいいじゃない:

 裸足が禁止になった結果、日本じゃ下駄が大流行したそうです。

 草履も好評☆ この時代は機械化もあって大量生産! かるーく調べただけでも明治-昭和にかけて大流行して昭和三◯年ごろにゃあ年間五千六百万足生産とか草生えるわ。

:福山市観光サイト:
ttps://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/site/miryoku2023/288034.html

 ちなみに、我がふるさと日光市でも『日光下駄』なるものがあります。ほら、日光って二社一寺あるじゃん? ああいうトコ入るには、お清め処理された草履を履かなきゃダメだったんですよ。でも急斜面が多かったり雪が積もってたり何かと不便な道が多いので、特別に〝御免ごめん下駄〟という草履と下駄のハイブリッド? みたいなのが開発されたんですよ。

 その名残りが日光下駄。たぶん、これ見たら「ほぼ草履じゃねーか!」とツッコミたくなると思うよ?

:日光市観光 公式:
ttps://www.nikko-kankou.org/spot/1008


 下駄か草履かはともかく、前段落で紹介したように裸足禁止令が東京市で組み込まれてから、全国的にじわりじわりと履物を履く習慣が広まっていった。他に沖縄でも『裸足取締規則』なるものが公布されたようだけど、わたしが調べた限りはその他の地域で「裸足はダメだゾ☆」的な命令はなかったようです。

 まあ、そんなの既存法でどうとでも処理できそうだけどな……ちなみに、令和の御世ではとっくにこの命令は無効になっておりますのでご安心ください。罰則規定のある刑法も旧式のやつなので、たとえキミが裸足になっても警察さんはハンカチをクチに咥えて見ているだけです。

「ざまーみろ! だれも我を罰することはできんのだ!」 ――などとほざきつつ裸足で商店街を闊歩するといいですよ。



 日本の風土として、あまり厚着しないほうがいいと思うんですよね。そういう意味じゃ浴衣に下駄や草履って良い選択肢だと思うんですよ。ついでに昔ながらのスタイルでパンツ履かないとかどうですか女子のみなさん?

 ぜひぜひ!
 男子に夢を与えると思って!

 女子に限らず男子もやるといいよ。ちょっとスースーするけどだいぶ涼しくなるし、とくに昨今の夏はあつぅ~い日がながぁ~く続くからね、文明の利器にしたがって冷房ガンガン効かすのもいいけど、たまにゃあ古き善きジャパニーズのスピリットを呼び起こしてみてはいかがでしょう?

 今回のエピソードを読んで、裸足で外を歩きたくなったら高評価とレビューをお願いします。
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