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作者: タアアタ
残酷な描写あり
第13話 テヌ王国
テヌ王は王城から辺りを見回して、
増えに増えた魔物の数に怯えてくらしていた。
 それもこれも自らが雇った召喚士たちに、
ボイコットを喰らって挙句の果て、
ボイコットというのはまあ反撃みたいなもんだ。
その反撃が、逆襲ともいうかが、
魔物を召喚し続けてやる魔方陣を張られたことらしく、
いまや国内全体にあっという間によく分からない名前も、
判別もつかない化け物がふえに増えて、互いに、
争いあっている具合のところ。
 誰かの助けが欲しいところ、やれやれである。
「召喚」
テヌ王様が、
助けを求めて召喚されたのは少年少女たち、
なんでも異世界にワープすると、
どんな世界の少年少女でもすごく強くなってしまう、
そういう資格が勝手に身についてしまう、
都合の良いお話があるらしく、実践してみたのだ。
「そなたらは死ぬ直前を我に助けられた」
「よって我を助けてほしい」
なんでだよ? という子供もいるが、
前の世界に飽き飽きしてたという子供は、
至極、はやく、技を身に着けて、
この世界一番のなにがしになるのだという。
「召喚、便利な魔法、反面」
使えば使うだけ混沌を招く、
人手不足を補うために召喚をしたが、
「ええい、お前ら一人一人の冒険などどうでもいいのだ!」
大事なのは現状把握、そういう人員を召喚出来た試しがない、
「王よ王よ召喚士たちがまたしても魔物を召喚しました」
「王よ救世主の転生が完了しました」
魔物と救世主が増えに増えたあげく、これを裁く手段もない、
「王よ王よ救世主と魔物が結婚しました」
「王よ誤って魔族の王が召喚されました」
「王よ魔族の王が少年と結婚しました」
「王よ結婚したものへ送る祝儀の品はいかがいたします?」
文士が必要になる、報告される情報すべてを軽く、
平らげてくれる便利な文士が、
「余にはすべてを管理しきれん、文士を呼べここへ」
「はっ」 一等文士さまここへ~
「王様、お呼びでしょうか?」
「国内は今や異世界から転生したもので溢れておる」
「はっ確かにそのように」
「その数は今や数十万人の数となってひしめき
 国内でもはや管理しきれぬ」
「異世界移民に対する、法を作りたいと?」
「そうじゃ、異世界から呼び寄せられたものすべてに」
「どのような法を?」
「彼らが国外へ退去するように命じたいのじゃ」
「見た目は普通人と一緒です、その証拠となるものは?」
「召喚士よ、ここへ」
「召喚された転生したものには魔力でマークされています」
「召喚された時にそれと分かる様に額にマークがなされます」
「これを照合することで異世界転生移民か否かがわかります」
「なるほど、ではそのように文章手続きを取り一筆」
異世界転生人はその数を三十三万六千八百余名、
みなこの国の窮地に呼び出され、現れた魔王、魔神、竜、
竜人、天使、天帝、神と闘い、争った挙句、愛を誓い、
この地でモテにモテまくったせいで国民は不満を抱えてます。
 どこにいったってモテるのですから、いっそ外国へ旅をと、
その許可証のようなものを作って手配することと致しまして、
商人連と陸運、海運連合の組合、ようするに一大ギルドから、
異世界転生人通用のパスカードを発行してもらい、
 この国からの退去を速やかにと、各国での滞在日数制限を、
それぞれ決定し、これを守らなかったものには、パスカード没収、及び強制退去処分とする。
 とわが国での法を作りましたが、他の国の王に書簡を送りますか?
 「頼む、もはや一刻の猶予も持たない」
これがのちの民族大移動となる異世界転生人大移動である。
脅威の生態を持つ異世界転生人とその連れ合い達が突如とし、
世界各地を冒険する理由を得た瞬間、優れたる民族であるをよしとし、他を圧倒し、世界に新たな法を築くまで、そう時間は掛からない、
 一度、解き放たれた異世界転生民族は、東西南北にその血を広げ、芋づる式にこの世界の根幹を引っこ抜いて回る。
このような、国の大変化に対応できる小国は少なく、
いままで細々とクエストをクリアしていた各地の小冒険者達、
彼らのクエストは消滅し、職を失って賊に身を転じる。
 更には国の官位を授かっては、諸悪を根絶せんとし働く異世界転生民族達のおそるべき進出速度は、神の見えざる手で動くという経済さえも支配しかねない。 これが『転生』の威力である。
 このようなものを許してよいのだろうか?
否、新たな法を今、必要としていた。
「冒険者求む、異世界転生民族に勝てる手段を幅広く」
モンスターと乱交を重ねた雑種交配が進む異世界転生民族は、
もはや人間の体をなさず、自由の翼を得るもの、より便利な、
肉体を求めて変化するものなど、魔人さながらの働きに、
いつしか最初あったはずの名前さえ書きかえられ上位魔族に、
変貌を遂げるなど、まったく想像だにしない変化をする。
「これは、まずいですね」
魔法使いたちは薄々感づいていた、
禁忌ともいえる転生の儀を多用した世界の末路というものを、
文士、魔法使いたちの話を取りまとめるに、
「数と量、質、すべての分野で限界に達し始めていると?」
「ええ、人材はこれ以上要らないところに、さらに増えて、
 またその人材を片づけるために人員を割くので」
「一人転生させれば百万の人を抱える国が揺らぐ、すでに
 三十三万六千八百余名をよびだしたのですから、
 この世界の人口は4000億なければ成り立たない」
「まだ転生の儀を執り行っていない時代に
 魔法使いが把握しただけでも30億人しかこの世界には
 民がいなかったので、とうの昔に限界を迎えています」
「これからは異世界転生民族同士が争い合う世界になり、
 我らは、彼ら以上に転生を余儀なくされる運命かと」
「なるほど」
転生人達が持つ宿命の量産ほど恐ろしいものはない、
それを現に魔物を呼び出した輩は理解していたのだろう。
大量のクエストが文士たちを過剰労働に追い込み、
気付けば、どのクエストも社会を圧迫する異世界転生民族と、
その敵であるものの奪い合う存在でしかない。
「この世界の冒険者というもの自体が転生したものに
 切り替わってしまったのなら、どうしようもないものだ」
それどころか異世界転生民族団結によるギルドを作り、
異世界転生民族達が生きやすい世界を作るためのクエストを、
発注し続けるのだと考えたらどうだろうか?
「もはや文士一人の考えでどうこうという状態ではないな
 この世界は好き勝手に生きるものの所有物、混沌だよ」
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