*1*
グリニッジ標準時15時
「敵艦隊動き始めました。射程に入ります」
最初に動き始めたのはアンダーソン元帥率いるギルド艦隊だった。前面にユニオン駆逐艦隊12隻を擁する紡錘陣で、後方には予備役の装甲巡洋艦、航空巡洋艦、カネタ級戦艦を擁し、最後尾にアンダーソン元帥座乗の空母がいる。
対する反乱軍艦隊は20隻から成る駆逐艦隊に旗艦である軽巡洋艦1隻、後方には正規軍艦隊と数こそ反乱軍に有利だが前線の隊員は未熟な学徒動員で、対するギルド軍は最新鋭の駆逐艦が戦列を固めている。戦力差は反乱軍にやや不利な状況だ。
「全艦に通達、全艦隊を以て三重の単横陣を展開せよ、有効射程距離ギリギリまで引き付けてからプラズマ兵装にて砲撃を加える、第二、第三陣は接近に合わせて両翼へ展開し包み込むように展開して砲撃を加えろ」
両艦隊の砲撃が始まった。ギルド軍は高電圧のプラズマ弾による砲撃を加えつつ反乱軍艦隊を引きちぎっていく。引きちぎられた反乱軍艦隊はギルド軍に対して両舷から砲撃を加える。ギルド軍は空母からは艦載機が次々に発艦し、特に両脇に展開する駆逐艦隊に雷撃を加えていく。一隻、また一隻と反乱軍から落伍艦が出て、反乱軍は少しずつ形勢不利になっていく。
「セシリア艦長の策は、どうやら成功したようだな…」
アンダーソン元帥が呟いた。
エックハルトを説得しに行ったセシリアとルイーサの立てた作戦とは、反乱軍が時間稼ぎのための弾除け程度にしか考えていないエックハルト艦隊を違和感のない消耗戦で戦線離脱させ、ギルドはそれに応じてプラズマ兵装で艦隊をすべて撃破し、エックハルトを艦隊ともども安全無事に投降させようというものだった。軍人としての誇りを捨てさせるこの作戦にエックハルトが応じたのは、彼にはまだ誇りよりも大事にするべきものの分別がつくとルイーサが判断したためだった。
「第一陣すべて戦闘不能、第二陣も間もなく喪失します。損耗率3割を超えました、提督、このままでは全滅です」
「慌てるな、我々の目的は後衛艦隊とヨトゥンヘイムに対する直接攻撃への時間稼ぎだ。ここで踏ん張ればいい。行動可能な艦を中央に集めろ、単横陣にて敵艦に集中砲撃を加える」
ギルド軍の飽和攻撃に4割、3割と交戦可能な艦隊は損耗し、動ける艦はとうとうエックハルトのビフレストのみになった。しかしそれでも後衛の艦隊は動かず、エックハルトは改めて自分たちが捨て石にされたことを悟った。
「提督、艦隊は戦闘不能です。一度ヨトゥンヘイムに戻りましょう」
「ヨトゥンヘイムには戻らない。進路敵艦隊に向け前進、敵艦隊指令に繋げ、降伏する」
「…わかりました」
険しい顔をしながら艦橋を出て行った副官の背中を見送って、未熟なクルーたちだったが皆が自分に対して従順だったことは非常に助かったと、エックハルトは思った。ここで何やかんやと余計な軍人精神でごねるような部下がいればこの作戦は成立しなかっただろう。すべての隊員の戦線離脱を確認して、エックハルトは独り艦橋に残り、アンダーソン元帥に投降を伝えた。
「敵艦隊動き始めました。射程に入ります」
最初に動き始めたのはアンダーソン元帥率いるギルド艦隊だった。前面にユニオン駆逐艦隊12隻を擁する紡錘陣で、後方には予備役の装甲巡洋艦、航空巡洋艦、カネタ級戦艦を擁し、最後尾にアンダーソン元帥座乗の空母がいる。
対する反乱軍艦隊は20隻から成る駆逐艦隊に旗艦である軽巡洋艦1隻、後方には正規軍艦隊と数こそ反乱軍に有利だが前線の隊員は未熟な学徒動員で、対するギルド軍は最新鋭の駆逐艦が戦列を固めている。戦力差は反乱軍にやや不利な状況だ。
「全艦に通達、全艦隊を以て三重の単横陣を展開せよ、有効射程距離ギリギリまで引き付けてからプラズマ兵装にて砲撃を加える、第二、第三陣は接近に合わせて両翼へ展開し包み込むように展開して砲撃を加えろ」
両艦隊の砲撃が始まった。ギルド軍は高電圧のプラズマ弾による砲撃を加えつつ反乱軍艦隊を引きちぎっていく。引きちぎられた反乱軍艦隊はギルド軍に対して両舷から砲撃を加える。ギルド軍は空母からは艦載機が次々に発艦し、特に両脇に展開する駆逐艦隊に雷撃を加えていく。一隻、また一隻と反乱軍から落伍艦が出て、反乱軍は少しずつ形勢不利になっていく。
「セシリア艦長の策は、どうやら成功したようだな…」
アンダーソン元帥が呟いた。
エックハルトを説得しに行ったセシリアとルイーサの立てた作戦とは、反乱軍が時間稼ぎのための弾除け程度にしか考えていないエックハルト艦隊を違和感のない消耗戦で戦線離脱させ、ギルドはそれに応じてプラズマ兵装で艦隊をすべて撃破し、エックハルトを艦隊ともども安全無事に投降させようというものだった。軍人としての誇りを捨てさせるこの作戦にエックハルトが応じたのは、彼にはまだ誇りよりも大事にするべきものの分別がつくとルイーサが判断したためだった。
「第一陣すべて戦闘不能、第二陣も間もなく喪失します。損耗率3割を超えました、提督、このままでは全滅です」
「慌てるな、我々の目的は後衛艦隊とヨトゥンヘイムに対する直接攻撃への時間稼ぎだ。ここで踏ん張ればいい。行動可能な艦を中央に集めろ、単横陣にて敵艦に集中砲撃を加える」
ギルド軍の飽和攻撃に4割、3割と交戦可能な艦隊は損耗し、動ける艦はとうとうエックハルトのビフレストのみになった。しかしそれでも後衛の艦隊は動かず、エックハルトは改めて自分たちが捨て石にされたことを悟った。
「提督、艦隊は戦闘不能です。一度ヨトゥンヘイムに戻りましょう」
「ヨトゥンヘイムには戻らない。進路敵艦隊に向け前進、敵艦隊指令に繋げ、降伏する」
「…わかりました」
険しい顔をしながら艦橋を出て行った副官の背中を見送って、未熟なクルーたちだったが皆が自分に対して従順だったことは非常に助かったと、エックハルトは思った。ここで何やかんやと余計な軍人精神でごねるような部下がいればこの作戦は成立しなかっただろう。すべての隊員の戦線離脱を確認して、エックハルトは独り艦橋に残り、アンダーソン元帥に投降を伝えた。