残酷な描写あり
デートしちゃいけないですか⁈ ①
ガタンゴトンと電車が揺れる。左隣をみると、その振動に合わせて奏お姉ちゃんも軽く上下に揺れる。少しすると、眠たそうにあくびをしていた。
滅多に見られないからとてもレアだ。貴重だ。そして最高にカワイイ! スマホのカメラを機動していればそんな瞬間をいつでも見返せたのに。私はとても惜しい気分だった。しかし、起きる時間は普段と変わらないはずなのに不思議だ。
もしかして、奏お姉ちゃんもこのデート? が楽しみで眠れなかったのだろうか? だとしたら私はとても嬉しい。奏お姉ちゃんにはちょっとしたことでしかないと思っていたのに、そんなに楽しみにしていてくれたと思うと言葉では言い表せないくらい嬉しくてたまらない。
「美優羽ちゃん? 私の顔を見つめてどうしたの?」
奏お姉ちゃんが不思議そうに私を見つめていた。流石にお姉ちゃんを凝視しすぎていたようだ。
「な、なんでもないわよっ」
私は少し焦ってしまいながら否定した。
「そうなのぉ。何か顔に付いてたのかなあって思ったけど、それなら大丈夫だね」
奏お姉ちゃんはニコニコしながら答えていた。よかった。この気持ちには気付かれていないみたいだ。私はほっと一安心した。
「そう言えば、今日はどこに行くの? 美優羽ちゃんにお任せしてたから、どこに行くか楽しみだったんだぁ」
お姉ちゃんはキラキラした目で私を見つめている。そうだった。その日の楽しみにする為に、奏お姉ちゃんには行き先を教えていなかった。一応雨の日でも大丈夫なところとは伝えていたが。
ここまで楽しみにしてくれているのは嬉しい反面、少し怖い。好きそうな場所を選んだし、奏お姉ちゃんが文句を言うとは思わない。だが、期待に添えられない場所だとがっかりさせてしまうかもしれない。
言わないという選択肢もある。ただ、奏お姉ちゃんはとても知りたそうにこっちを見ている。その選択肢は取れないだろう。私は少し息を吸ってから言った。
「えっと、まず午前中はオーワールド水族館に行くわ。そこでペンギンとかイルカとか観る予定」
「うんうん!」
奏お姉ちゃんは首を縦に振る。表情も興味津々と言う感じだ。
「それから、榛名ヶ丘――大手会社が運営するショッピングモール――に行ってお昼ご飯を食べるわ。それから、お姉ちゃん、眼鏡と服が欲しいって言ってたでしょ。その二つを見に行きましょ。あとは、今日晴れたから、少し歩くけど春村の桜並木を見に行くつもり。予定はそんな感じよっ」
緊張して少し早口になってしまったがとりあえず伝え切った。奏お姉ちゃんの反応は……?
「うん、いいと思うよぉ。ペンギンさん久しぶりに観れるし、私の欲しかったものも見れるし。桜並木も楽しみだなあ」
喜んでくれているようだ。私はほっと一息ついた。
「よかったわ。喜んでくれて」
「今から楽しみだね」
奏お姉ちゃんは私に微笑みかけた。
午前10時を少し過ぎた頃。私と奏お姉ちゃんはオーワールド水族館に着いた。
「わぁー! 久しぶりだねぇ。美優羽ちゃん」
「うん、そうね」
奏お姉ちゃんはとてもウキウキしながら言っていた。私たちがここに来たのは小学6年生以来である。その時は、家族全員で来たと思う。その時から結構大きい場所だったが、更に大きくなっている気がする。そう言えば、2年前に改装したとか言ってたと言うことを思い出した。
ちなみに、このオーワールドは通称で、正確な名前はオーシャンワールド水族館になる。ただ、長いので県民からは頭文字をとってオーワールドと呼ばれている。
そんなことは置いておいて、私が水族館を選んだのにはいくつか理由がある。雨でも大丈夫というのは大きい理由だが、それ以外にも3つある。
まず、奏お姉ちゃんがペンギンとイルカが大好きであるということ。これは昔からそうだったから間違いない。私も好きだがそれよりもペンギンとイルカを見て喜ぶ奏お姉ちゃんが何よりも見たい。きっと、「きゃー! かわいいっ!」とか言ってかわいい反応を見せてくれるはず。楽しみだ。
2つ目が暗くてムードがいいということだ。明るいところもそれはそれでいいが、水族館は暗いけど、水槽のおかげで幻想的でとてもいいムードになる。そんな雰囲気に居れば、少しは奏お姉ちゃんと距離が近づくんじゃないかと思う。あくまで妄想だけど。
3つ目は何か話に困ってもお魚を指さして話しておけば、会話に困らないことだ。まあこれに関しては心配する必要がないと思う。だが、もしも飽きさせてしまったら、好感度が下がってしまうから、それを防ぐことができるわけだ。保険ではあるが、保険はとても大切だ。
そんなこんなで大人チケット2枚を購入し、水族館に入った。
館内は白を基調とした感じの構造で、とても広々としている。入って左側に数メートル進むと中規模程度のお土産コーナーがある。そこにはオーワールドの名物のラッコにちなんだお土産や、イルカ、ペンギンのイラストが使われたタオルやシャツなどが所狭しと並んでいる。
流石に来たばかりなのでお土産はまだ買わない。出口も近いので、帰り際にいくつか買っていこう。私はそう思いながらお土産コーナーを過ぎ去ろうとした。すると、奏お姉ちゃんがいない。一体どこに行ったのか。焦って少し探すと、お土産コーナーのペンギンのタオルに釘付けになっていた。
「お姉ちゃん。今はまだ買わないわよ。今買うと手荷物になって邪魔になるでしょ?」
「うーん、わかった……。帰りにするね。バイバイ、ペンギンさん……」
奏お姉ちゃんはしょんぼりしながら私の方へ向かった。まあ奏お姉ちゃんの好きそうなデザインだから、飛びつきたくなるのはわかるが、今は我慢させておこう。
私は奏お姉ちゃんを連れて歩いた。さて、イルカショーまでは時間がある。イルカは好きだが最前列は水飛沫やらなんやらでずぶ濡れになってしまう。流石に濡れてまで観る気はない。それに気に入っている服だから、濡らしたくない。なので、ある程度時間を潰してちょうど中段くらいの席を取れそうな時間を選ぶ必要がある。
なので、同じ階の奄美の珊瑚礁を模した展示とかを観て時間を潰そう。私達は目の前の大きな噴水を横切って、通路の方へと向かった。
滅多に見られないからとてもレアだ。貴重だ。そして最高にカワイイ! スマホのカメラを機動していればそんな瞬間をいつでも見返せたのに。私はとても惜しい気分だった。しかし、起きる時間は普段と変わらないはずなのに不思議だ。
もしかして、奏お姉ちゃんもこのデート? が楽しみで眠れなかったのだろうか? だとしたら私はとても嬉しい。奏お姉ちゃんにはちょっとしたことでしかないと思っていたのに、そんなに楽しみにしていてくれたと思うと言葉では言い表せないくらい嬉しくてたまらない。
「美優羽ちゃん? 私の顔を見つめてどうしたの?」
奏お姉ちゃんが不思議そうに私を見つめていた。流石にお姉ちゃんを凝視しすぎていたようだ。
「な、なんでもないわよっ」
私は少し焦ってしまいながら否定した。
「そうなのぉ。何か顔に付いてたのかなあって思ったけど、それなら大丈夫だね」
奏お姉ちゃんはニコニコしながら答えていた。よかった。この気持ちには気付かれていないみたいだ。私はほっと一安心した。
「そう言えば、今日はどこに行くの? 美優羽ちゃんにお任せしてたから、どこに行くか楽しみだったんだぁ」
お姉ちゃんはキラキラした目で私を見つめている。そうだった。その日の楽しみにする為に、奏お姉ちゃんには行き先を教えていなかった。一応雨の日でも大丈夫なところとは伝えていたが。
ここまで楽しみにしてくれているのは嬉しい反面、少し怖い。好きそうな場所を選んだし、奏お姉ちゃんが文句を言うとは思わない。だが、期待に添えられない場所だとがっかりさせてしまうかもしれない。
言わないという選択肢もある。ただ、奏お姉ちゃんはとても知りたそうにこっちを見ている。その選択肢は取れないだろう。私は少し息を吸ってから言った。
「えっと、まず午前中はオーワールド水族館に行くわ。そこでペンギンとかイルカとか観る予定」
「うんうん!」
奏お姉ちゃんは首を縦に振る。表情も興味津々と言う感じだ。
「それから、榛名ヶ丘――大手会社が運営するショッピングモール――に行ってお昼ご飯を食べるわ。それから、お姉ちゃん、眼鏡と服が欲しいって言ってたでしょ。その二つを見に行きましょ。あとは、今日晴れたから、少し歩くけど春村の桜並木を見に行くつもり。予定はそんな感じよっ」
緊張して少し早口になってしまったがとりあえず伝え切った。奏お姉ちゃんの反応は……?
「うん、いいと思うよぉ。ペンギンさん久しぶりに観れるし、私の欲しかったものも見れるし。桜並木も楽しみだなあ」
喜んでくれているようだ。私はほっと一息ついた。
「よかったわ。喜んでくれて」
「今から楽しみだね」
奏お姉ちゃんは私に微笑みかけた。
午前10時を少し過ぎた頃。私と奏お姉ちゃんはオーワールド水族館に着いた。
「わぁー! 久しぶりだねぇ。美優羽ちゃん」
「うん、そうね」
奏お姉ちゃんはとてもウキウキしながら言っていた。私たちがここに来たのは小学6年生以来である。その時は、家族全員で来たと思う。その時から結構大きい場所だったが、更に大きくなっている気がする。そう言えば、2年前に改装したとか言ってたと言うことを思い出した。
ちなみに、このオーワールドは通称で、正確な名前はオーシャンワールド水族館になる。ただ、長いので県民からは頭文字をとってオーワールドと呼ばれている。
そんなことは置いておいて、私が水族館を選んだのにはいくつか理由がある。雨でも大丈夫というのは大きい理由だが、それ以外にも3つある。
まず、奏お姉ちゃんがペンギンとイルカが大好きであるということ。これは昔からそうだったから間違いない。私も好きだがそれよりもペンギンとイルカを見て喜ぶ奏お姉ちゃんが何よりも見たい。きっと、「きゃー! かわいいっ!」とか言ってかわいい反応を見せてくれるはず。楽しみだ。
2つ目が暗くてムードがいいということだ。明るいところもそれはそれでいいが、水族館は暗いけど、水槽のおかげで幻想的でとてもいいムードになる。そんな雰囲気に居れば、少しは奏お姉ちゃんと距離が近づくんじゃないかと思う。あくまで妄想だけど。
3つ目は何か話に困ってもお魚を指さして話しておけば、会話に困らないことだ。まあこれに関しては心配する必要がないと思う。だが、もしも飽きさせてしまったら、好感度が下がってしまうから、それを防ぐことができるわけだ。保険ではあるが、保険はとても大切だ。
そんなこんなで大人チケット2枚を購入し、水族館に入った。
館内は白を基調とした感じの構造で、とても広々としている。入って左側に数メートル進むと中規模程度のお土産コーナーがある。そこにはオーワールドの名物のラッコにちなんだお土産や、イルカ、ペンギンのイラストが使われたタオルやシャツなどが所狭しと並んでいる。
流石に来たばかりなのでお土産はまだ買わない。出口も近いので、帰り際にいくつか買っていこう。私はそう思いながらお土産コーナーを過ぎ去ろうとした。すると、奏お姉ちゃんがいない。一体どこに行ったのか。焦って少し探すと、お土産コーナーのペンギンのタオルに釘付けになっていた。
「お姉ちゃん。今はまだ買わないわよ。今買うと手荷物になって邪魔になるでしょ?」
「うーん、わかった……。帰りにするね。バイバイ、ペンギンさん……」
奏お姉ちゃんはしょんぼりしながら私の方へ向かった。まあ奏お姉ちゃんの好きそうなデザインだから、飛びつきたくなるのはわかるが、今は我慢させておこう。
私は奏お姉ちゃんを連れて歩いた。さて、イルカショーまでは時間がある。イルカは好きだが最前列は水飛沫やらなんやらでずぶ濡れになってしまう。流石に濡れてまで観る気はない。それに気に入っている服だから、濡らしたくない。なので、ある程度時間を潰してちょうど中段くらいの席を取れそうな時間を選ぶ必要がある。
なので、同じ階の奄美の珊瑚礁を模した展示とかを観て時間を潰そう。私達は目の前の大きな噴水を横切って、通路の方へと向かった。