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作者: チルカワ桜那
R-15
忘れられない存在
ざああっと風がふいている。
森林みたいなところでパーカーを着ていた1人の人間が立っている。
ピンク色の髪の毛が風で靡いている。
少女…じゃない。女性だ。
だってもう彼女は親に頼らなくても生きてられる大人なのだから。
高校生ではなく大学生‥になっている
ここは昔、よくきていた懐かしい場所。
展望台より最高の景色。
「あやる」
私をよぶ聞き慣れた声がして思わず振り向いた。
「千広くん…」
驚きを隠せない。
ここは普段誰も人が来ない。
自分にとっての秘密基地であった。
「居たの」
「なに驚いてんの」
そう言いながら隣にやってきた
「ここ、人来ないからよく分かったなあって」
あやるは座りこんで
「黙ってどっか行くな。」
低い声にびくりと肩を揺らす
「起きたら居なくなったと思って焦っただろ。」
怒ってる…
「ごめんなさ……っ、ん」
咄嗟に謝ろうとしたけど口を塞がれた。
キスされて目を丸くする。
「……んっ、あ」
再び堕ちてくる。
「千広く…んうっ」
咄嗟に止めるが… 私はもう止められない程マイナスに堕ちていた。
思考がダメと思うのに
体が熱い。ぼーっとする。
景色よりも今は…千広くんだけしか…考えられない。
もっと…欲しい。
「んんっ…」
大好きだから。もっとこうしていたい。
私の心臓がいとも簡単に反応するのは

★★★★★
「きれー」
夜空の星を眺めていた。
すると隣でずっと私に寄りかかっていた千広くんが急に抱きしめてきた。
思わず驚くと、ぎゅうと力がこもる。
私も抱きしめ返すと千広くんがびくりと反応する。
「大丈夫だよ、もう逃げないし私は千広くんのもの。」
その言葉に沈黙が続いて…ちひろくんはふいっと顔を逸らした
「なら俺に何されても文句言うなよ」
ぼそりと何か言われた気がした
「え?」
数日前、たまたま千広くんの両親に出会って話したことを思い出した。
『智陽ちはるには松葉家代々慕ってるからなあ、あのまま殺されて死んだらしいんだが…先祖代々今でも恨みは続いてるんだが当時は智春が止めたんだよ。』
確かに止めた…。
当時の私は重傷でさすが松葉家であって、殺そうとしてたのを止めたんだ。
危機的状況に陥っていたから偶然たまたま聞きつけたのを助けただけだったのだが何故か松葉家に居ることになった智春
けどまさか智春がそこまで松葉家に慕われるとは思わなかった。
『その通り…ですね。』
その時衝撃な言葉をはしってきた。
『息子と結婚しろ』
『へ?』
『聞こえなかったのか?松葉家の繁栄のため、息子の千広と結婚しろ』
さすがに驚いた。
『ちょっ!私は別に結婚とか…話が早すぎます!』
確かに千広くんのことは好きだけど…
さすがにそこまでは…
ねえ……
千広くんは私と結婚したいと思う?
なんて…そんなわけないよね
今までは正直な気持ちに避けてきた
けれど今度は私は正直に気持ちに向き合いたいよ…
そう思ってこちらを向いた千広くんに口づけた
『高校は赤帝に行く』
なんてこと伝えたっけ。
関わりがあった友達も赤帝に行ってしまったから当時は、本当に行こうと思ってた
それに千広くんへの気持ちを避けてたのと父親の影響で千広くんにはもう関わりたくなかったから。
関わらない方が今までのことから全て解放するから。
ううん、されないけども今までよりは…。
でもやっぱり正直千広くんとはたとえ関わらなくても一緒の高校がよかったから黒帝に通ったなんて…口避けても言わないけど
もうこれで忘れられるなんて思うけど。
さすが中学でもモテてるだけあって高校でも人気者なのか必ずしも出てくる名前。
……っ。その名前聞きたくない。
けれど名前が出てくるだけで会うよりはまだよかった。
だから、クイーンに指名されたときはもうどうしようかと焦って最悪だと思った。
だってもう遠い存在として関わることがないだろうと忘れようとしてた彼がいるから――――
思えばここ1年間関わらなかったのに千広くんのことを1秒とも忘れられなかった。
忘れたかったのに忘れられない存在。
この気持ちに必死で抵抗して気にしないふりしてたのに。
これで何度目だろう。
この気持ちに自覚してしまった今、もう手遅れだってことに。
なんで今になって…。今更。
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