Exspetioa2.10.12
今日は礼拝で、衝撃的なお話がありました。
「十二月二十五日の大礼拝で、シスター・セナを正式に、『神の花嫁』とする」
皆さんの視線が、いっぺんに私に集まりました。私はびっくりして、肩と膝が跳ねたまま、かたまっていました。
その後すぐに、マザーのお部屋に招かれました。
マザーのお部屋は薪暖炉があり、とてもぽかぽかしていました。机にはりんごのケーキとジンジャーとオレンジピールのティーが準備されていました。ちょうど食事の時間でしたので、先にいただくべきだと思い、頂戴しました。口の中にじゅわりと広がるりんごの果汁、辛くもやさしいジンジャーとオレンジの風味にほっとして、かたまっていた体が温かくなっていきました。
食べ終わるなり、私は、「あの……」と唇を開きました。
「先ほどの発表の件なのですが……どういうことなのでしょう。私はずっと、神様が復活された時、神様ご本人から正式な『神の花嫁』として認めてくださるものだと思っていたのですが……」
マザーはにっこりほほ笑みました。
「セナは何も考えなくていい。セナはただ、もっともっと神を愛してくれればいい」
そしてマザーは、「今日から、礼拝の後から午後の労働が終わるまで、ここで、私と一緒に過ごして」とおっしゃいました。私はまた、びっくりしました。冬は、草花の手入れが特に大切な時期です。せめて、休息の時間はお仕事をさせていただきたいとお願いしました。
「ニゲラに、会いに行くわけじゃないよね」
私は、うなずきました。もちろん、中庭にいらっしゃればお話ししたいと思いますが、お手入れをしなければならないのは、本当のことなのです。
「そう。なら、許可してもいい。でも、ニゲラとも他の子たちとも、無意味な接触はしないように。
神と二人きりの楽園で咲く。そのつもりで、神を愛して。十二月二十五日の大礼拝までに、神だけを愛する、完璧な『神の花嫁』になって」
マザーは、大礼拝では、儀式を行うのだと教えてくださいました。
儀式……。厳かな響きに、私は、私にできるのか、とても不安になりました。
その後さっそく、マザーから、儀式の内容を教えていただきました。
まずは、神様の代役であるマザーに一礼をし、片膝をつきます。次に、マザーが、右手を差し出します。私はその手を受け取り、誓いの言葉を述べて、手の甲にキスをいたします。マザーが二歩下がったら立ち上がり、最後にもう一度、マザーに一礼をします。
午後の「神の学び」の際に練習し、ひとつひとつの流れは覚えたのですが、一礼そのものや、一礼から片膝をつくまでの動作の美しさを追求することが必要不可欠のように思えました。
私の知っている中で、一番美しい礼をしていらっしゃったのは、シスター・アザレアでした。シスター・アザレアの美しい礼の姿を思い出しながら、この後、練習をしたいと思います。
誓いの言葉も、頑張って覚えなければなりません。マザーに書いていただいた文を、この後しっかり読み返したいと思います。
――そういえば、練習中に気が付いたのですが、マザーの右手には、花が咲いていないように思えました。布で隠していらっしゃるから、正しいことはわからないのですが……。なんとなく、唇で触れた時の感触から、そう思ったのです。
私と同じく、なにかご事情があるのかもしれません。このことは、何も触れずにいたいと思います。
「十二月二十五日の大礼拝で、シスター・セナを正式に、『神の花嫁』とする」
皆さんの視線が、いっぺんに私に集まりました。私はびっくりして、肩と膝が跳ねたまま、かたまっていました。
その後すぐに、マザーのお部屋に招かれました。
マザーのお部屋は薪暖炉があり、とてもぽかぽかしていました。机にはりんごのケーキとジンジャーとオレンジピールのティーが準備されていました。ちょうど食事の時間でしたので、先にいただくべきだと思い、頂戴しました。口の中にじゅわりと広がるりんごの果汁、辛くもやさしいジンジャーとオレンジの風味にほっとして、かたまっていた体が温かくなっていきました。
食べ終わるなり、私は、「あの……」と唇を開きました。
「先ほどの発表の件なのですが……どういうことなのでしょう。私はずっと、神様が復活された時、神様ご本人から正式な『神の花嫁』として認めてくださるものだと思っていたのですが……」
マザーはにっこりほほ笑みました。
「セナは何も考えなくていい。セナはただ、もっともっと神を愛してくれればいい」
そしてマザーは、「今日から、礼拝の後から午後の労働が終わるまで、ここで、私と一緒に過ごして」とおっしゃいました。私はまた、びっくりしました。冬は、草花の手入れが特に大切な時期です。せめて、休息の時間はお仕事をさせていただきたいとお願いしました。
「ニゲラに、会いに行くわけじゃないよね」
私は、うなずきました。もちろん、中庭にいらっしゃればお話ししたいと思いますが、お手入れをしなければならないのは、本当のことなのです。
「そう。なら、許可してもいい。でも、ニゲラとも他の子たちとも、無意味な接触はしないように。
神と二人きりの楽園で咲く。そのつもりで、神を愛して。十二月二十五日の大礼拝までに、神だけを愛する、完璧な『神の花嫁』になって」
マザーは、大礼拝では、儀式を行うのだと教えてくださいました。
儀式……。厳かな響きに、私は、私にできるのか、とても不安になりました。
その後さっそく、マザーから、儀式の内容を教えていただきました。
まずは、神様の代役であるマザーに一礼をし、片膝をつきます。次に、マザーが、右手を差し出します。私はその手を受け取り、誓いの言葉を述べて、手の甲にキスをいたします。マザーが二歩下がったら立ち上がり、最後にもう一度、マザーに一礼をします。
午後の「神の学び」の際に練習し、ひとつひとつの流れは覚えたのですが、一礼そのものや、一礼から片膝をつくまでの動作の美しさを追求することが必要不可欠のように思えました。
私の知っている中で、一番美しい礼をしていらっしゃったのは、シスター・アザレアでした。シスター・アザレアの美しい礼の姿を思い出しながら、この後、練習をしたいと思います。
誓いの言葉も、頑張って覚えなければなりません。マザーに書いていただいた文を、この後しっかり読み返したいと思います。
――そういえば、練習中に気が付いたのですが、マザーの右手には、花が咲いていないように思えました。布で隠していらっしゃるから、正しいことはわからないのですが……。なんとなく、唇で触れた時の感触から、そう思ったのです。
私と同じく、なにかご事情があるのかもしれません。このことは、何も触れずにいたいと思います。