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作者: 金星タヌキ
R-15
part Aki 10/17 am 8:25



 今日のTVの星占いは 総合4位で 恋愛運は星4つ。

 今日 10月17日は ボクこと宮村 亜樹の17回目の誕生日。
 総合4位ってゆーのは 誕生日の運勢としては まずまずってところ。昨日の夜は11時過ぎにこんのさんのメッセージを確認してすぐ寝て ついさっき8時に起きた。けっこうグッスリ眠れたから 気分もそれなりにいい調子。まぁ カミングアウトは できてなくて 周りにウソついてるような(自分にウソついてるのか?)引っ掛かりは 続いている。お陰で なんとなく世界は モノクロームでは あるけどね。

 こんのさんのことが好きで でも半分以上 諦めていてってゆー状態は 相変わらずなんだけど 文化祭前みたいに 不安定な感じは なくて 静かに落ち着いてこんのさんのことを考えられる。
 
 こんのさんの バレーも学校も 一生懸命に頑張ってる充実した眼差し。その合間に見せる 物憂いような 思い詰めたような 大人っぽい貌。その反対の危うげで儚い幼い表情。その刹那の瞳の美しさをキャンバスに落とし込むことができた。作品が完成したとき こんのさんの全てを描ききることができたって思った……。
 

 
 ……でも 完成して2日目 日曜日の朝 美術室で自分の作品を見たとき『これはボクなんだ』って思った。いくら精根込めて描いても作品がこんのさんになるワケじゃない。
 
 この作品に真実があるとしたら それは〈ボクの気持ち〉。
 
 この世界の誰一人として『男の子のボク』がいることに気づいて無いけど ボクは この半年の間 真剣に紺野 瞳さんってゆー女の子に恋をして向き合ってきた。その想いを何千回 何万回と 絵筆に乗せてキャンバスに向き合った。〈あき〉なのか〈ボク〉なのかって不安になるような曖昧なものじゃない。

 
 この気持ちは〈ボク〉のものだ。

 
 世界の誰一人ボクの存在を知らなくても この作品には ボクの真実がある。この世界に〈ボク〉がいるとの確かな証。

 ボクの名前は宮村 亜樹。
 十七歳。彼女いない歴 17年目に突入。
 平凡な高校生だ。
 たいして自慢できることも無いけど これだけは言える。
 
 〈ボク〉は



 

 ……コンコンッ。

 自分なりに17歳の覚悟を固めていると 部屋のドアがノックされた。


「亜樹 起きてる?」


 幸樹兄さんの声だ。朝早くから 何の用だろ? 今日は 日曜日。バイトも無いハズだし 大抵 昼前まで寝てるのに…。まぁ ボクも いつもなら寝てる時間帯だけど。


「うん。起きてる。こーちゃん 何か用?」


 そう。人前では さすがに幸樹兄さんって呼ぶけど 家では こーちゃんって呼ぶ。昔からのクセで なかなか直らない。ドアが開き 兄さんが姿を見せる。こんのさんより高い177㎝。背が高い割には けっこう童顔。その童顔を隠すようにかけた 縁の細い銀色の眼鏡。インケン根暗メガネこと 宮村 幸樹 19歳。大学2年生。ボクの一つ上の兄だ。


「うわっ…。相変わらずの 汚い部屋。今日は 友達来るんだろ? ちょっとは 掃除したら?」


 開口一番 いきなり嫌味。さすがの性格の悪さだ。


「……んだよ。嫌味 言いにきたの?」


 こーちゃん相手だと ほぼ 男言葉。ホント 嫌なヤツだけど 一番 喋り易くもある。


「イヤミなんて言ってないよ。事実を口にしただけ。口答えするヒマあったら 部屋の惨状 直視した方がいいと思うよ?」


 ホントにムカツク。


「で 何の用?」

「ん。今日 誕生日でしょ。これ プレゼント。こないだ気にしてた美術展のカタログ。東京だし行けないだろからカタログだけでも 眺めてたら?」


 そう言って 書店のロゴの入ったレジ袋を手渡してくる。受け取るとズッシリとした重さだ。そー言えば 東京である美術展の話をした覚えがある。どーせ行けないし 忘れてたんだけど。こーちゃん 覚えててくれたんだな…。


「ゴメン。ありがと。……でも けっこう高かったんじゃないの?」

「まぁ 僕も大学生だからね。貧乏高校生とは 経済規模が違うから」


 ……イチイチ 嫌味な言い方しないと気が済まないのか。『カワイイ妹の誕生日だし 大したことないよ』とか言っとけばカドも立たないのに…。プレゼント持ってきて好感度下げる人間って珍しいと思う。


「……なぁ 亜樹。このカッコって変じゃないかな?」


 プレゼント受け取ったし サッサと出ていけよって思ってたら こーちゃんが変なこと聞いてきた。カッコ? こーちゃんの服装に 何の関心もないんだけど? 兄さんは いつも通りの ツマンナイ服装。ちょっと色落ちした黒のジーンズに青のチェックのコットンシャツ。その上にダークグレーのパーカーを羽織ってる。別に見苦しいってほどじゃないけど オシャレとは ほど遠い。いつも通りだ。
 ……いや。いつも通りじゃないのか? シャツは 下ろしたてっぽいし 髪の毛もワックスかなんかで ちょっとだけセットされている。

 なんだ? こーちゃんのクセに女の子とお出かけ? まぁ どーせデートじゃないだろうけど。一緒に出かけるメンバーに 気になる女の子でも いるんだろうな。

 
「どこ行くの?」

「星都大の博物館」


 ビンゴ。デートじゃない。大学の勉強絡みだ。


「女の人も 来るんだ?」

「…まぁ そうだね」

「ふーん。美人?」

「亜樹よりは」


 マジにムカツク。
 

「あっそ。そのモサイ格好で行って サッサとフラれたらいいと思うよ」

「ごめん。亜樹と同じぐらい美人」


 取って付けたような言い方で 気に食わないけど カタログの義理もある。アドバイスしといてやろう。


「あのさ そのチェックのシャツ 買ったばっかでしょ? 色もキレイだし ちょっといい感じじゃん。でも 内側に着ちゃってるから 死んでるワケ。だから そのシャツをアウターに持ってくんの。で 内側は 秋色のタートルネックとか あったらいいけど どーせ持ってないだろから……。…そーいや ボクが今 着てるのと似た フード付きのトレーナー持ってたじゃん。アレ着たら? ズボンも黒じゃなくて 明るめにしたら 縦のラインが出ると思うし。それで ちょっとはマシになると思うよ?」


 こーちゃん 背も高いし 瑞樹兄さんほどじゃないにしても体格もいいから 縦のライン出したら ちょっとはカッコいいって思われるんじゃないかな。まぁ 性格改善しない限りは 瞬殺でフラれることに変わりは ないだろうけど……。


「わかった。ありがとな。ちょっと着替えてくる」


 兄さんは いそいそと部屋を出ていく。ボクも今日は こんのさんが 部屋に遊びに来てくれる。兄妹(兄弟か?)そろって 報われない恋に 身を焦がす 虚しい日曜日。やれやれだ…。
 ………。
 ……。
 …。

 
 
            to be continued in “part Kon 10/17 am 10:43”






 


 
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