残酷な描写あり
第九十三話「剣で結ぶ縁」
第五次剣血喝祭開催まであと5日――
2人の青年がある建物に向かって歩く。一人は赤髪の白い騎士服、もう一人は銀髪に同じ服を身につけている。同じ歩幅で歩くその姿は正しく長年過ごしてきた相棒だ。
「いや〜、まさかあの事件が俺達をここまで導いただなんて思いもしなかったよな〜」
「彼らがいなかったら俺達きっとこのまま王様とその側近としてレイブン城に引きこもりだったぞ。あの人に感謝しないとな」
あの人……そう、あの時何故かエイジがアースラにトドメを刺したところを見ていた桐谷優羽汰である。その優羽汰がカルマの父……即ち国王に報告したことによって、カルマとエイジは王国から栄誉を讃えられた。
その報酬として2人には王国最高級の聖剣を渡された。また優羽汰がその事を正嗣総長に伝えたところ、カルマとエイジもネフティス推薦としてこのアルスタリア高等学院に入学する事が出来たのだ。
つまり水星に彼らが来なければ……あの時の嵐に飲まれていなかったら、きっとこんな道を辿る事なんて絶対に無かった。
「……だから、今度は俺達の番だ。これまでの恩返ししないとな」
「おう、そうだな爺」
「はぁ……俺は爺じゃねぇって何回言ったら分かるんだ……」
いつもの流れで2人は彼ら……大蛇達のいる建物へ向かうのだった――
アルスタリア高等学院 校長室――
「……入りたまえ」
「失礼します」
コンコンとノックする音が扉越しから聞こえ、入るよう指示する。その後すぐにベディヴィエルが入ってきて、白衣の男にある資料を渡した。
「……これが奴のデータか」
「はい。今回の入学前試験での戦闘データや訓練での動きや能力が書かれています」
「ほう……」
白衣の男はタバコを吸いながら一枚一枚その資料に目を通す。そこに載ってある人物……そう、黒神大蛇のデータが全てその資料にまとめられていた。
「……ベディヴィエル」
「……はい」
刹那、白衣の男は資料を片手でくしゃりと握り潰し冷酷な目でベディヴィエルを睨んだ。
「何故殺さなかった? 何故手加減した? 奴は危険だと散々お前には言ったはずだ」
「ですが、そんな危険な存在とはいいこの学園の生徒……」
「黙れ。言い訳は聞いてない。何故殺さなかったのかを聞いているのだ」
「それは……」
「入学など関係ない。私が殺せと言ったら殺すのが生徒会長たるお前の責務なのだ。学園長たる私の命令に逆らうようなら今お前を殺す」
「――!!」
ベディヴィエルの顔が恐怖で真っ青になると同時に腹部に何かが貫通し、床に大量の血を流す。白衣の男はベディヴィエルの腹部を貫いた手刀を引き抜き、手についた血を払う。
「がはっ……ごぼっ……」
「お前はただ奴を殺すために生きろ。それがお前の運命なのだ。逆らうとこれでは済まされないぞ。サーシェスの二の舞になりたくなければ私に従え。私の犬となれ。そして狂犬と化して邪竜を殺すのだ」
「……は、はい………」
貫通された腹部の風穴に左手で回復魔法をかけながら校長室から出る。白衣の男は窓の方へと向かい、夜空を見上げていた。
「お前が何度生まれ変わろうとも無駄だ……お前の辿る結末は変わらない。人間如きに宿命は変えられない。今度こそ思い知らせて絶望に陥れてみせる……」
冷酷な目で見つめた夜空は微かに曇り始めていた――
2人の青年がある建物に向かって歩く。一人は赤髪の白い騎士服、もう一人は銀髪に同じ服を身につけている。同じ歩幅で歩くその姿は正しく長年過ごしてきた相棒だ。
「いや〜、まさかあの事件が俺達をここまで導いただなんて思いもしなかったよな〜」
「彼らがいなかったら俺達きっとこのまま王様とその側近としてレイブン城に引きこもりだったぞ。あの人に感謝しないとな」
あの人……そう、あの時何故かエイジがアースラにトドメを刺したところを見ていた桐谷優羽汰である。その優羽汰がカルマの父……即ち国王に報告したことによって、カルマとエイジは王国から栄誉を讃えられた。
その報酬として2人には王国最高級の聖剣を渡された。また優羽汰がその事を正嗣総長に伝えたところ、カルマとエイジもネフティス推薦としてこのアルスタリア高等学院に入学する事が出来たのだ。
つまり水星に彼らが来なければ……あの時の嵐に飲まれていなかったら、きっとこんな道を辿る事なんて絶対に無かった。
「……だから、今度は俺達の番だ。これまでの恩返ししないとな」
「おう、そうだな爺」
「はぁ……俺は爺じゃねぇって何回言ったら分かるんだ……」
いつもの流れで2人は彼ら……大蛇達のいる建物へ向かうのだった――
アルスタリア高等学院 校長室――
「……入りたまえ」
「失礼します」
コンコンとノックする音が扉越しから聞こえ、入るよう指示する。その後すぐにベディヴィエルが入ってきて、白衣の男にある資料を渡した。
「……これが奴のデータか」
「はい。今回の入学前試験での戦闘データや訓練での動きや能力が書かれています」
「ほう……」
白衣の男はタバコを吸いながら一枚一枚その資料に目を通す。そこに載ってある人物……そう、黒神大蛇のデータが全てその資料にまとめられていた。
「……ベディヴィエル」
「……はい」
刹那、白衣の男は資料を片手でくしゃりと握り潰し冷酷な目でベディヴィエルを睨んだ。
「何故殺さなかった? 何故手加減した? 奴は危険だと散々お前には言ったはずだ」
「ですが、そんな危険な存在とはいいこの学園の生徒……」
「黙れ。言い訳は聞いてない。何故殺さなかったのかを聞いているのだ」
「それは……」
「入学など関係ない。私が殺せと言ったら殺すのが生徒会長たるお前の責務なのだ。学園長たる私の命令に逆らうようなら今お前を殺す」
「――!!」
ベディヴィエルの顔が恐怖で真っ青になると同時に腹部に何かが貫通し、床に大量の血を流す。白衣の男はベディヴィエルの腹部を貫いた手刀を引き抜き、手についた血を払う。
「がはっ……ごぼっ……」
「お前はただ奴を殺すために生きろ。それがお前の運命なのだ。逆らうとこれでは済まされないぞ。サーシェスの二の舞になりたくなければ私に従え。私の犬となれ。そして狂犬と化して邪竜を殺すのだ」
「……は、はい………」
貫通された腹部の風穴に左手で回復魔法をかけながら校長室から出る。白衣の男は窓の方へと向かい、夜空を見上げていた。
「お前が何度生まれ変わろうとも無駄だ……お前の辿る結末は変わらない。人間如きに宿命は変えられない。今度こそ思い知らせて絶望に陥れてみせる……」
冷酷な目で見つめた夜空は微かに曇り始めていた――