深夜のメッセージ
咲香とキャッチボールをした日から二日後の深夜十二時。
珍しく伸哉は全く眠れず、一時間以上少ししては起きて、また少ししたら起きてしまう、という悪循環に見舞われていた。
「眠れない。どうしようか」
翌日が休みならこのまま起きていても悪くはないが、日付は生憎の水曜日。金曜日なら授業を何とか乗り越え、帰ってすぐに寝るという選択肢を取ることも出来ないわけではない。
しかし、翌日である木曜日は朝から体育があるため、一徹する選択肢は完全に消えた。
「はあー。いい安眠法ってないもんかな」
仕方がないので、伸哉は眠れる方法を考え始めた。
「何か飲めば眠れるかな。あーでも家にはコーヒーとココアしかない。けど、僕は両方とも飲めないから却下。匂いを嗅ぐと眠れるやつもあるらしいけど、うちには多分なさそうだから却下。あとは、ゆっくり目な音楽を聞くという方法だけか」
そう言って音楽を聞くために、スマートフォンの電源をつけ、ネットから音楽サイトのページを開いた。
「さてと、今流行りボカロにでも、いや。テンポが速いの多いからダメ。というかそれじゃ興奮して目覚めちゃうだろ。だったら、このおすすめヒーリングミュージックってやつを……」
伸哉は音楽欄を適当に押し、音楽を聴き始めた。三十分ほど聞き終えたところで眠くなってきて、しばしばする眼をこすりだした。
「やっと眠くなれた。今がチャンスだから、さっさと寝ますか」
眠りにつこうと目を閉じた途端、咲香とのキャッチボールのことを思い出した。
「あの時は楽しかったな……」
昼休みのことを思い出すだけで、ワクワクが止まらない。誰かとキャッチボールをした感覚が忘れられない。気づいたら身体をベットから起こし、グラブと、全国大会の一回戦のウイニングボールを手に取っていた。
「あの頃が懐かしいな。本当、楽しかったよな……」
伸哉が過去を振り返りながら、感傷に浸っているその時だった。メールを受信したスマートフォンが震えた。メッセージを見ると、
「村野咲香でーす!」
と書かれていた。
「なんだ、村野さんか」
メッセージを開いて内容の確認をするとこういう内容が書かれていた。
“L○NE友達から聞いたんだ。
もし良かったら登録してね。
それから、キャッチボール楽しかったね^ ^
また、誘ってもいいかな?”
「キャッチボールね。咲香さん、というかあんな感じなら僕も楽しめるし、たまにはああやって他の人とするのも悪くはないから、とりあえずOKってことで」
伸哉はメールにOKですよとだけ打って返した。その後、L○NEで少々やり取りをして楽しんでいると、咲香が突然、伸哉の核心へと触れるメッセージを送ってきた。
“そういえば、どうして野球やめたと?
伸哉クンうまかったって聞いたから、スゴイもったいないなって思ったし、それにキャッチボールしとるときの伸哉クン、ずッと笑っとったけん、どうして辞めたとかなって?
あ、嫌やったら別に答えんでもいいよ!色々事情があるみたいやし”
そのメッセージを見た時、伸哉はどう返そうか迷った。本当は他人にあまり言いたくない。けれど、純粋無垢な咲香に対して嘘をつきたくもなかった。
散々悩んだ末、この人なら大丈夫と判断し、事の真実を書いていった。
事の顛末を知った咲香は、画面を前にして固まった。
「そんな酷いことあったなんて…」
想像以上に悲惨で残酷な事に、なんと返していいかわからず、咲香は青白く光る携帯の画面を困った顔見つめていた。すると、返信をしていなのに、伸哉から一件のメッセージが届いた。
“本当は、もう一度誰かと一緒に野球をやりたい。
けど、怖いんだ。たとえみんなと仲良く出来たって、誰に壊されるかわからない。壊れた時に、前みたいなことがもう一度起こる。それが、一番怖いんだ…。”
そのメールを見た途端、咲香は伸哉に返す一番いい言葉を見つけた。
伸哉がメッセージを送って十分後、咲香から返信が届いた。
“楽しめばいいんじゃないかな。周りを気にしないくらいうーんと楽しんじゃえば、気が楽になると思う。世の中何事も楽しんだもん勝ちだし、伸哉クンなら出来ると思うよ。伸哉クンが野球をやってもやらなくても、あたしは伸哉クンを応援するよ(^_^)”
咲香の書いた言葉は、最も単純なことだった。だがこの単純な言葉が、伸哉の悩みや不安を全部何処かへと消し飛ばしていた。
「楽しむか。ふふふ。当たり前だけど、僕はすっかり忘れていた」
伸哉は考えすぎていたことに気が付いた。伸哉の悩みや不安を打ち消すには、この位単純なことでよかったのだ。迷いのなくなった伸哉は、パソコンを開き、彰久のL○NEを探しだした。
「えっと、これだ」
何かに憑りつかれたかのように文章を打ち込み、祈るような気持ちでメッセージを送った。そして、咲香にも忘れずにL○NEを返した。
これで、もう一度戻れる。あの場所へ。その後、強烈な睡魔が伸哉を襲い、伸哉はすぐさま眠りについた。
珍しく伸哉は全く眠れず、一時間以上少ししては起きて、また少ししたら起きてしまう、という悪循環に見舞われていた。
「眠れない。どうしようか」
翌日が休みならこのまま起きていても悪くはないが、日付は生憎の水曜日。金曜日なら授業を何とか乗り越え、帰ってすぐに寝るという選択肢を取ることも出来ないわけではない。
しかし、翌日である木曜日は朝から体育があるため、一徹する選択肢は完全に消えた。
「はあー。いい安眠法ってないもんかな」
仕方がないので、伸哉は眠れる方法を考え始めた。
「何か飲めば眠れるかな。あーでも家にはコーヒーとココアしかない。けど、僕は両方とも飲めないから却下。匂いを嗅ぐと眠れるやつもあるらしいけど、うちには多分なさそうだから却下。あとは、ゆっくり目な音楽を聞くという方法だけか」
そう言って音楽を聞くために、スマートフォンの電源をつけ、ネットから音楽サイトのページを開いた。
「さてと、今流行りボカロにでも、いや。テンポが速いの多いからダメ。というかそれじゃ興奮して目覚めちゃうだろ。だったら、このおすすめヒーリングミュージックってやつを……」
伸哉は音楽欄を適当に押し、音楽を聴き始めた。三十分ほど聞き終えたところで眠くなってきて、しばしばする眼をこすりだした。
「やっと眠くなれた。今がチャンスだから、さっさと寝ますか」
眠りにつこうと目を閉じた途端、咲香とのキャッチボールのことを思い出した。
「あの時は楽しかったな……」
昼休みのことを思い出すだけで、ワクワクが止まらない。誰かとキャッチボールをした感覚が忘れられない。気づいたら身体をベットから起こし、グラブと、全国大会の一回戦のウイニングボールを手に取っていた。
「あの頃が懐かしいな。本当、楽しかったよな……」
伸哉が過去を振り返りながら、感傷に浸っているその時だった。メールを受信したスマートフォンが震えた。メッセージを見ると、
「村野咲香でーす!」
と書かれていた。
「なんだ、村野さんか」
メッセージを開いて内容の確認をするとこういう内容が書かれていた。
“L○NE友達から聞いたんだ。
もし良かったら登録してね。
それから、キャッチボール楽しかったね^ ^
また、誘ってもいいかな?”
「キャッチボールね。咲香さん、というかあんな感じなら僕も楽しめるし、たまにはああやって他の人とするのも悪くはないから、とりあえずOKってことで」
伸哉はメールにOKですよとだけ打って返した。その後、L○NEで少々やり取りをして楽しんでいると、咲香が突然、伸哉の核心へと触れるメッセージを送ってきた。
“そういえば、どうして野球やめたと?
伸哉クンうまかったって聞いたから、スゴイもったいないなって思ったし、それにキャッチボールしとるときの伸哉クン、ずッと笑っとったけん、どうして辞めたとかなって?
あ、嫌やったら別に答えんでもいいよ!色々事情があるみたいやし”
そのメッセージを見た時、伸哉はどう返そうか迷った。本当は他人にあまり言いたくない。けれど、純粋無垢な咲香に対して嘘をつきたくもなかった。
散々悩んだ末、この人なら大丈夫と判断し、事の真実を書いていった。
事の顛末を知った咲香は、画面を前にして固まった。
「そんな酷いことあったなんて…」
想像以上に悲惨で残酷な事に、なんと返していいかわからず、咲香は青白く光る携帯の画面を困った顔見つめていた。すると、返信をしていなのに、伸哉から一件のメッセージが届いた。
“本当は、もう一度誰かと一緒に野球をやりたい。
けど、怖いんだ。たとえみんなと仲良く出来たって、誰に壊されるかわからない。壊れた時に、前みたいなことがもう一度起こる。それが、一番怖いんだ…。”
そのメールを見た途端、咲香は伸哉に返す一番いい言葉を見つけた。
伸哉がメッセージを送って十分後、咲香から返信が届いた。
“楽しめばいいんじゃないかな。周りを気にしないくらいうーんと楽しんじゃえば、気が楽になると思う。世の中何事も楽しんだもん勝ちだし、伸哉クンなら出来ると思うよ。伸哉クンが野球をやってもやらなくても、あたしは伸哉クンを応援するよ(^_^)”
咲香の書いた言葉は、最も単純なことだった。だがこの単純な言葉が、伸哉の悩みや不安を全部何処かへと消し飛ばしていた。
「楽しむか。ふふふ。当たり前だけど、僕はすっかり忘れていた」
伸哉は考えすぎていたことに気が付いた。伸哉の悩みや不安を打ち消すには、この位単純なことでよかったのだ。迷いのなくなった伸哉は、パソコンを開き、彰久のL○NEを探しだした。
「えっと、これだ」
何かに憑りつかれたかのように文章を打ち込み、祈るような気持ちでメッセージを送った。そして、咲香にも忘れずにL○NEを返した。
これで、もう一度戻れる。あの場所へ。その後、強烈な睡魔が伸哉を襲い、伸哉はすぐさま眠りについた。