残酷な描写あり
R-15
異端者
長閑な郊外を四人の女子が歩いていた。
獅子族、鳥人族、虎族、野狐族の肉食系の四人であり、一人を除いて和気藹々といった雰囲気で歩いていた。
「しっかしアンタ、よく外出許可を出してもらえたわね」
「保健室の先生にいいました」
「今日こそわかってるわよね?」
「……はい」
「あたしたちが誰のためにこんな危険なことをしてるか反省しなさい!」
「申し訳ございません」
「「「……はぁ~~っ!」」」
野狐族と他三人の仲がそれほど良いものではないと窺える。
野狐族の女の子は申し訳無さそうな表情で俯く。
(大体なんでノーマジの面倒なんて見ないといけないのよ!)
(魔力が特級クラスでも魔法が無いんじゃ、落ちこぼれでしょ!)
(それなのに何で首席なのよ!)
((あたしたちだって知らないわよ!))
「あ、あの……」
「何よ!」
獅子族の女子はイライラした様子で野狐族の女子に応える。
野狐族の女子は怯えた表情で女子三人の後ろに指を指す。
その方向へ振り向くと牛型の獣が鼻息を荒くして見つめていた。
「出たわね!ライ!クォン!準備はいいっ?」
「「もちろん!」」
三人は魔力を昂らせ、牛型の獣と対峙する。
そして次の瞬間――彼女達の姿は一瞬にして消えたのである。
そう。
野狐族の女子を置いて逃亡したのだ。
突然のことで困惑していると牛型の獣は彼女に向かって突進の構えを取る。
攻撃対象が自身であると理解した野狐族の女子は逃げようと足を動かそうとするが、まるで足に杭を打たれたように身動きが取れなかった。
獣の突進は彼女に直撃し、吹き飛ばされたのだった。
§
レンは走ってリコの元へ向かっていると三人の女子がこちらに向かって走ってくるのを見つける。
「キミたち!ちょっと待って!」
突然声をかけられ、三人は立ち止まる。
レンは三人の前に立ち口を開く。
「キミたち、特級クラスのヒトだよね?リコさん知らないかな?」
「な……なによ。あたし達は何もしてないわよ?……それに中等級のヒトがあたし達に何の用?」
「だから、リコさんは知らないの?先生が四人で近郊にいるハズだって――」
「あんなノーマジ知らないわよ!今頃魔獣の餌にでもなってるんじゃないの?」
レンは犬族の女子が発した言葉に全身の毛を逆立てる。
「お前たち……何をしたのかわかってるの!?」
「ノーマジに生きる資格なんてな――」
「ふざけるなっ!もういいっ!」
レンは三人の事を放置し、リコの居るだろうと思われる場所へと急ぐ。
すると、牛型の獣に吹き飛ばされている女子の姿を確認し、焦りの表情となる。
地面にゴロゴロと転がる彼女は立ち上がる気力があるようで、必死に獣から逃げようと腕だけで逃亡を図る。
もちろんそのような速度では逃げられるはずもなく、容赦の無い突進が彼女へと襲いかかる。
レンは空中に風の紋章を描き、詠唱を始める。
「『唸りを上げる烈風よ。その刃をもって敵を刻めっ!』」
リコに突進が当たる数メートル手前でレンの魔法が発動し、牛型の獣は全身を細かく切り刻まれ、血飛沫を上げる。
しかし、木偶人形とは違い、絶命させる事は叶わなかった。
獣にとって予想外の一撃であり、怯んだ所にレンは立ちはだかる。
「大丈夫っ!?」
レンはリコの姿を見ると制服がボロボロになり、砂埃で汚れ、全身に裂傷を負っているのか毛の隙間から血が流れているのを確認する。
それでも彼女の意識はしっかりとしており、レンを見つめていた。
「あなたは……」
「立ち上がれる?」
「何とか……」
「オレの肩に捕まっていいから、早くここから離れよう!」
「ブルゥゥゥアッ!」
獣が逃すまいと咆哮を上げ、レンは思わず怯む。
真正面ではレンの魔法の発動するよりも早く突進が直撃する。
紋章魔法の使い手は距離を詰められては何もできない事をこの時、実感するのだった。
レンはメリルから預かった【爆裂】の魔法が込められている魔道具に手をかけようとすると、リコが一歩前に出る。
「……めえ先生に言われて来たのでしょう?あなたが一緒に巻き込まれる必要はないので、逃げてください」
「ダメだ……そんなのダメだ!オレは先生に言われなくたってキミを助ける!同じノーマジだからとかじゃなく、オレがそうしたいんだ!だから……一緒に逃げるよ!」
レンは杖を引き抜き、リコを抱き寄せ、杖の先端を獣に向けて魔力を込めた。
「爆ぜろ!」
魔道具に込められていた【爆裂】の魔法はかなりの威力であり、皮を削いだ程度の威力しか出せなかったレンの魔法と違い、風船のように膨らませたかと思うと、獣の肉体の限界を超えて爆発四散した。
血の雨が降り注ぎ、二人の前に獣の生首がボトリと落ちる。
「や、やったぞ……!これなら……あ。魔道具が……」
メリルから預かった魔道具は役目を終えたと言わんばかりに金属製であるにも関わらず、粉々に砕けた。
レンはリコの様子を見ようと見上げると、予想以上に距離が近いことに驚き、シャカシャカと後ずさる。
「ご、ごめんっ!勝手に……その……ハグしちゃって……」
「いえ……助けていただけたので気にもしてませんでした……」
二人の間に少し気まずい空気が流れ、レンは誤魔化すように地図を広げて帰り道を確認する。
すると、リコがそばに寄り、絶望的な表情で指を指す。
その方向へとレンは振り向くと、三体の狼型の獣が二人に狙いを定めていたのであった。
獅子族、鳥人族、虎族、野狐族の肉食系の四人であり、一人を除いて和気藹々といった雰囲気で歩いていた。
「しっかしアンタ、よく外出許可を出してもらえたわね」
「保健室の先生にいいました」
「今日こそわかってるわよね?」
「……はい」
「あたしたちが誰のためにこんな危険なことをしてるか反省しなさい!」
「申し訳ございません」
「「「……はぁ~~っ!」」」
野狐族と他三人の仲がそれほど良いものではないと窺える。
野狐族の女の子は申し訳無さそうな表情で俯く。
(大体なんでノーマジの面倒なんて見ないといけないのよ!)
(魔力が特級クラスでも魔法が無いんじゃ、落ちこぼれでしょ!)
(それなのに何で首席なのよ!)
((あたしたちだって知らないわよ!))
「あ、あの……」
「何よ!」
獅子族の女子はイライラした様子で野狐族の女子に応える。
野狐族の女子は怯えた表情で女子三人の後ろに指を指す。
その方向へ振り向くと牛型の獣が鼻息を荒くして見つめていた。
「出たわね!ライ!クォン!準備はいいっ?」
「「もちろん!」」
三人は魔力を昂らせ、牛型の獣と対峙する。
そして次の瞬間――彼女達の姿は一瞬にして消えたのである。
そう。
野狐族の女子を置いて逃亡したのだ。
突然のことで困惑していると牛型の獣は彼女に向かって突進の構えを取る。
攻撃対象が自身であると理解した野狐族の女子は逃げようと足を動かそうとするが、まるで足に杭を打たれたように身動きが取れなかった。
獣の突進は彼女に直撃し、吹き飛ばされたのだった。
§
レンは走ってリコの元へ向かっていると三人の女子がこちらに向かって走ってくるのを見つける。
「キミたち!ちょっと待って!」
突然声をかけられ、三人は立ち止まる。
レンは三人の前に立ち口を開く。
「キミたち、特級クラスのヒトだよね?リコさん知らないかな?」
「な……なによ。あたし達は何もしてないわよ?……それに中等級のヒトがあたし達に何の用?」
「だから、リコさんは知らないの?先生が四人で近郊にいるハズだって――」
「あんなノーマジ知らないわよ!今頃魔獣の餌にでもなってるんじゃないの?」
レンは犬族の女子が発した言葉に全身の毛を逆立てる。
「お前たち……何をしたのかわかってるの!?」
「ノーマジに生きる資格なんてな――」
「ふざけるなっ!もういいっ!」
レンは三人の事を放置し、リコの居るだろうと思われる場所へと急ぐ。
すると、牛型の獣に吹き飛ばされている女子の姿を確認し、焦りの表情となる。
地面にゴロゴロと転がる彼女は立ち上がる気力があるようで、必死に獣から逃げようと腕だけで逃亡を図る。
もちろんそのような速度では逃げられるはずもなく、容赦の無い突進が彼女へと襲いかかる。
レンは空中に風の紋章を描き、詠唱を始める。
「『唸りを上げる烈風よ。その刃をもって敵を刻めっ!』」
リコに突進が当たる数メートル手前でレンの魔法が発動し、牛型の獣は全身を細かく切り刻まれ、血飛沫を上げる。
しかし、木偶人形とは違い、絶命させる事は叶わなかった。
獣にとって予想外の一撃であり、怯んだ所にレンは立ちはだかる。
「大丈夫っ!?」
レンはリコの姿を見ると制服がボロボロになり、砂埃で汚れ、全身に裂傷を負っているのか毛の隙間から血が流れているのを確認する。
それでも彼女の意識はしっかりとしており、レンを見つめていた。
「あなたは……」
「立ち上がれる?」
「何とか……」
「オレの肩に捕まっていいから、早くここから離れよう!」
「ブルゥゥゥアッ!」
獣が逃すまいと咆哮を上げ、レンは思わず怯む。
真正面ではレンの魔法の発動するよりも早く突進が直撃する。
紋章魔法の使い手は距離を詰められては何もできない事をこの時、実感するのだった。
レンはメリルから預かった【爆裂】の魔法が込められている魔道具に手をかけようとすると、リコが一歩前に出る。
「……めえ先生に言われて来たのでしょう?あなたが一緒に巻き込まれる必要はないので、逃げてください」
「ダメだ……そんなのダメだ!オレは先生に言われなくたってキミを助ける!同じノーマジだからとかじゃなく、オレがそうしたいんだ!だから……一緒に逃げるよ!」
レンは杖を引き抜き、リコを抱き寄せ、杖の先端を獣に向けて魔力を込めた。
「爆ぜろ!」
魔道具に込められていた【爆裂】の魔法はかなりの威力であり、皮を削いだ程度の威力しか出せなかったレンの魔法と違い、風船のように膨らませたかと思うと、獣の肉体の限界を超えて爆発四散した。
血の雨が降り注ぎ、二人の前に獣の生首がボトリと落ちる。
「や、やったぞ……!これなら……あ。魔道具が……」
メリルから預かった魔道具は役目を終えたと言わんばかりに金属製であるにも関わらず、粉々に砕けた。
レンはリコの様子を見ようと見上げると、予想以上に距離が近いことに驚き、シャカシャカと後ずさる。
「ご、ごめんっ!勝手に……その……ハグしちゃって……」
「いえ……助けていただけたので気にもしてませんでした……」
二人の間に少し気まずい空気が流れ、レンは誤魔化すように地図を広げて帰り道を確認する。
すると、リコがそばに寄り、絶望的な表情で指を指す。
その方向へとレンは振り向くと、三体の狼型の獣が二人に狙いを定めていたのであった。