残酷な描写あり
R-15
デタラメ
暴風が収まり、レンはゆっくりと目を開ける。
リコを庇ったままの姿勢であったため、傍から見るとレンがリコを押し倒しているような形であり、素早く離れる。
「ご、ごめん……!重かったよね……」
「いえ……。私のほうが背が高いので特別重たいとは思いませんでした」
「ゔ……」
レンは密かに身長が低いことを気にしていたため、リコの悪気のない一言にぐさっと突き刺さる。
しかし、ヘコんでいる場合ではなく、あれから獣たちはどうなったのかとこっそり顔を出すと衝撃の光景が広がっていた。
強力な下降気流が一点に集中したことにより、草は愚か大地が大きく抉れていた。
魔法の中心や周辺には獣はおらず、直撃して死んだか、吹き飛ばされたのだろうとレンは判断した。
「すっげぇ……!こんなに威力が出るんだ……!」
「あの、少し良いですか?」
レンはリコの方へと振り向くと非常に申し訳無さそうな表情をしたリコが立っていた。
不思議そうに首を傾げて近づくと、その表情に納得がいった。
原因は魔道具が壊れていたということ。
レンは照れ隠しで後頭部を掻きながら笑う。
「大丈夫。それは一回で壊れるだろうと思って作ったものだから、気にしなくていいよ」
「……あの。もらってもいいですか?」
「え……。そんな壊れてしまったものを?」
「はい」
リコの意図を理解することができず、ゴミ同然な壊れた魔道具を持っていくことを了承する。
(ヘンな子だなぁ……)
不思議な行動をするリコに対し、レンは変人だと判断する。
二人は抉られた大地を見て改めて魔法の強大さを実感する。
「私は生まれて初めて魔法を使いました。それがこれほどの規模であることを実感しました。あの魔法は本当に【風】の元素魔法なのですか?複合魔法だったりしませんか?」
「複合魔法?」
「はい。特定の元素魔法を組み合わせることで元素の性質を変えたり、事象魔法も同じように性質を変えられるというものです。魔力消費が激しいのでたくさん放つことは出来ませんが……。まだ講義では習ってないですか?」
「いや……オレたち中等級のクラスは実技が主だから……」
「そうでしたか。ただの風魔法にしては他の方よりも威力が大きいと感じたので」
「それはリコさんが強い魔力を持ってるからじゃないかな?紋章魔法は威力が安定しない技術だから、たまたまリコさんの最大火力が出てしまったとか……?」
「あれは紋章魔法と言うのですね……。あの、私に貴重な体験をさせていただきありがとうございます。そろそろ日が暮れそうなので学園に戻りましょう」
レンは空を見上げると【太陽】は少しずつ光が失われている状況だった。
完全に夜になると国内なら大丈夫だが、ここは国から少し離れた場所である為急いで帰ることとなった。
§
完全に夜になる前に学園に到着した二人は保健室の前に到着していた。
リコが獣から攻撃を数回受けていたことで治療を行う為だった。
リコ自身は大した事がないと言うが、レンは攻撃を受けた瞬間を見ており、半ば強引に保健室の扉を開ける。
するとメリルがバタバタと忙しなく作業をしており、止めてしまうのは心苦しかったが、リコのために声をかける。
「先生!戻りました!」
「――!レンっ!無事だったか!?それに、リコまで連れて帰ってくれたのか……!本当によくやった……!お前は凄いよ……!」
「わわわっ……!せ、先生!リコさんの治療をしてほしいんですって!」
子供を褒めるように抱きしめて頭を撫でてくるメリルに恥ずかしさを感じながら当初の目的を告げる。
メリルはリコの姿を確認し、治療のため椅子に座らせる。
治療を開始する前、メリルはレンに対し埃を振り払うような仕草をする。
「ここからは女子のプライベートな話になる。レンは休むのが仕事だ。……明日、改めて話をしよう」
レンはしっかりと頷くと、一礼して保健室を後にした。
すっかり夜になってしまい、腹の虫を確認し、食堂に行くとレンの食事だけが残された状態だった。
自席に着席し、ご飯を平らげ、入浴は程々にして寮の自室へと帰る。
レンはベッドの上に寝転がり、リコのことを思い出していた。
(リコさんが本当に魔法が使えたら、あれだけの力が出せるんだよなぁ……。オレなんかよりも紋章魔法を使いこなしてたし、めえ先生に教わってたらあっという間に主席になれるんじゃ……あれ?入学式の挨拶って主席がやるんじゃ……。って事はリコさんは魔法技能以外は最高の成績を収めてるって事……!?えぇ……)
レンはリコの突出した成績に引きつつも羨ましく感じていた。
レンの成績はそれほど良くはない。
魔法の知識、構造、技能、応用と段階を踏んでいくのだが、魔法が使えないこともあり知識が欠如していた。
一方リコは風の魔法が魔道具に込められていると理解し、見事使いこなせてみせた。
「今度、図書館行こう……!」
本日行くとはならず、レンは夢の世界へと旅立っていくのであった。
§
レンは毎日同じ時間に起きる。
そして、日課の訓練所にて訓練を行う。
レンは真っ先に杖を取りに行き、確保する。
杖に魔力を込め、打ち込み用の人形に向かって振り抜いていく。
魔法の使用は禁止されており、そもそも魔法が発動できないように部屋には魔法がかけられているとか何とか。
それでもレンは杖を使って人形に殴打を繰り返していく。
「やあやあ、毎日頑張ってるね」
「あ、ポチおさん!オレ、紋章魔法を使う事ができたんです!まだ、全然制御もできないけど、頑張ります!」
「へぇ……!紋章魔法か……めえさんの入れ知恵だね。それはそうと、キミは部活を作ったようだね?部室にいい物届けてるから講義が終わったら使ってみ?ほんじゃまたね」
ポチおはそれだけ伝え、訓練所から去っていく。
少し疲れの色が見えていたポチおだったが、魔法技能士は需要のある仕事だと解釈し、自身を納得させた。
レンはポチおが届けてくれたと言う物を速く確認したいと思い、勉学が手につかないまま授業を受けることになったのだった。
リコを庇ったままの姿勢であったため、傍から見るとレンがリコを押し倒しているような形であり、素早く離れる。
「ご、ごめん……!重かったよね……」
「いえ……。私のほうが背が高いので特別重たいとは思いませんでした」
「ゔ……」
レンは密かに身長が低いことを気にしていたため、リコの悪気のない一言にぐさっと突き刺さる。
しかし、ヘコんでいる場合ではなく、あれから獣たちはどうなったのかとこっそり顔を出すと衝撃の光景が広がっていた。
強力な下降気流が一点に集中したことにより、草は愚か大地が大きく抉れていた。
魔法の中心や周辺には獣はおらず、直撃して死んだか、吹き飛ばされたのだろうとレンは判断した。
「すっげぇ……!こんなに威力が出るんだ……!」
「あの、少し良いですか?」
レンはリコの方へと振り向くと非常に申し訳無さそうな表情をしたリコが立っていた。
不思議そうに首を傾げて近づくと、その表情に納得がいった。
原因は魔道具が壊れていたということ。
レンは照れ隠しで後頭部を掻きながら笑う。
「大丈夫。それは一回で壊れるだろうと思って作ったものだから、気にしなくていいよ」
「……あの。もらってもいいですか?」
「え……。そんな壊れてしまったものを?」
「はい」
リコの意図を理解することができず、ゴミ同然な壊れた魔道具を持っていくことを了承する。
(ヘンな子だなぁ……)
不思議な行動をするリコに対し、レンは変人だと判断する。
二人は抉られた大地を見て改めて魔法の強大さを実感する。
「私は生まれて初めて魔法を使いました。それがこれほどの規模であることを実感しました。あの魔法は本当に【風】の元素魔法なのですか?複合魔法だったりしませんか?」
「複合魔法?」
「はい。特定の元素魔法を組み合わせることで元素の性質を変えたり、事象魔法も同じように性質を変えられるというものです。魔力消費が激しいのでたくさん放つことは出来ませんが……。まだ講義では習ってないですか?」
「いや……オレたち中等級のクラスは実技が主だから……」
「そうでしたか。ただの風魔法にしては他の方よりも威力が大きいと感じたので」
「それはリコさんが強い魔力を持ってるからじゃないかな?紋章魔法は威力が安定しない技術だから、たまたまリコさんの最大火力が出てしまったとか……?」
「あれは紋章魔法と言うのですね……。あの、私に貴重な体験をさせていただきありがとうございます。そろそろ日が暮れそうなので学園に戻りましょう」
レンは空を見上げると【太陽】は少しずつ光が失われている状況だった。
完全に夜になると国内なら大丈夫だが、ここは国から少し離れた場所である為急いで帰ることとなった。
§
完全に夜になる前に学園に到着した二人は保健室の前に到着していた。
リコが獣から攻撃を数回受けていたことで治療を行う為だった。
リコ自身は大した事がないと言うが、レンは攻撃を受けた瞬間を見ており、半ば強引に保健室の扉を開ける。
するとメリルがバタバタと忙しなく作業をしており、止めてしまうのは心苦しかったが、リコのために声をかける。
「先生!戻りました!」
「――!レンっ!無事だったか!?それに、リコまで連れて帰ってくれたのか……!本当によくやった……!お前は凄いよ……!」
「わわわっ……!せ、先生!リコさんの治療をしてほしいんですって!」
子供を褒めるように抱きしめて頭を撫でてくるメリルに恥ずかしさを感じながら当初の目的を告げる。
メリルはリコの姿を確認し、治療のため椅子に座らせる。
治療を開始する前、メリルはレンに対し埃を振り払うような仕草をする。
「ここからは女子のプライベートな話になる。レンは休むのが仕事だ。……明日、改めて話をしよう」
レンはしっかりと頷くと、一礼して保健室を後にした。
すっかり夜になってしまい、腹の虫を確認し、食堂に行くとレンの食事だけが残された状態だった。
自席に着席し、ご飯を平らげ、入浴は程々にして寮の自室へと帰る。
レンはベッドの上に寝転がり、リコのことを思い出していた。
(リコさんが本当に魔法が使えたら、あれだけの力が出せるんだよなぁ……。オレなんかよりも紋章魔法を使いこなしてたし、めえ先生に教わってたらあっという間に主席になれるんじゃ……あれ?入学式の挨拶って主席がやるんじゃ……。って事はリコさんは魔法技能以外は最高の成績を収めてるって事……!?えぇ……)
レンはリコの突出した成績に引きつつも羨ましく感じていた。
レンの成績はそれほど良くはない。
魔法の知識、構造、技能、応用と段階を踏んでいくのだが、魔法が使えないこともあり知識が欠如していた。
一方リコは風の魔法が魔道具に込められていると理解し、見事使いこなせてみせた。
「今度、図書館行こう……!」
本日行くとはならず、レンは夢の世界へと旅立っていくのであった。
§
レンは毎日同じ時間に起きる。
そして、日課の訓練所にて訓練を行う。
レンは真っ先に杖を取りに行き、確保する。
杖に魔力を込め、打ち込み用の人形に向かって振り抜いていく。
魔法の使用は禁止されており、そもそも魔法が発動できないように部屋には魔法がかけられているとか何とか。
それでもレンは杖を使って人形に殴打を繰り返していく。
「やあやあ、毎日頑張ってるね」
「あ、ポチおさん!オレ、紋章魔法を使う事ができたんです!まだ、全然制御もできないけど、頑張ります!」
「へぇ……!紋章魔法か……めえさんの入れ知恵だね。それはそうと、キミは部活を作ったようだね?部室にいい物届けてるから講義が終わったら使ってみ?ほんじゃまたね」
ポチおはそれだけ伝え、訓練所から去っていく。
少し疲れの色が見えていたポチおだったが、魔法技能士は需要のある仕事だと解釈し、自身を納得させた。
レンはポチおが届けてくれたと言う物を速く確認したいと思い、勉学が手につかないまま授業を受けることになったのだった。