三食昼寝付き実働二時間
そんな夢のような職場、あるんです
「おともだち? うーんやめとくわ」
「ガーン!」
フレンド申請拒否られた!
「しょ、しょんなッ」
「そこまで気にすることかよ」
絶望顔を披露してみました。となりの男子がヒドいひと言を放ちつつ、そんな状況を見てあわてて手をふるおねーさん。
「ちがうよ。おともだちじゃなくて相棒になってみないか? って話」
「あいぼう?」
それもまた魅力的なひびき!
「見たところ、ここにいるメンツみんないいカラダしてるじゃない? もしかしたらサーカスの一員として大活躍できるんじゃないかって思ったのさ」
「はぇ~、サーカスのいちいん……」
ちょっとイメージしてみる。
おっきなブランコに飛び乗って、ゆあーんゆよーんして、向かい側からやってきたもうひとつのブランコ、そこで手をひろげて待つおねーさんの胸にダイブ。
(うん、わるくない)
「とくにあんた、サバイバル向きの野性的なカラダしてるじゃないか」
「え、あたし? えへへぇ~そうかな」
「おい、ビシェル」
「なんだスプリット」
「あれ褒めてるのか?」
「わからん」
「褒めてるのではないのですか?」
「グウェンにはそう聞こえんのかい?」
「言ってる意味はわからないですけど、グレースさんが野性的だというのは同意できます」
「ん? さっきからみんななに話してるの?」
「べつに」
「ほらほらよそ見しないで。悪い話じゃないと思うよ? なんてったってうちのサーカスは三食昼寝つきで実働二時間だしね」
「なん――だとッ!」
それはノドから手が出るほどの好条件! ってか彼女のセリフにみんな耳をピンとたててる。
「異世界人だったらあたいたちにしか使えないワザも使えるじゃない?」
「スキルのことか?」
カニシュは興味津々に尋ねる少年に笑顔を向けた。
「人気者になれるよ? この世界の人間にゃあスキルなんてないからね。やたら速く動けたり細かい動きができたり……おかげで、あたいはすっかりサーカスの花形さ」
「おぉぉ、すげえ」
「ありがたい提案だが、私たちは王都へ向かう途中なのでな」
夢見るいたいけな少年が目にしいたけを宿らせたタイミングで、異世界人の提案を異世界人じゃないひとが拒否りました。とたんに目をほそめてそっちを見る花形さん。
「あんたには聞いてないけど……まあ、考えておいてよ。あとおともだちになろうって提案? いいよ。なろうじゃないか。お近づきのしるしとしてね?」
言って、彼女はブローチをひとつこちらに差し出す。澄んだ海、あるいは晴れわたる大空ののようなキレイな青。涙のしずくのような形をして、ピンで布の服に縫い付けられるようになっている。
「水の魔法が込められたブローチさ。コレがありゃ道中の水には困らないよ」
「みずのまほう……これが」
「ああ、あまりイジらないほうが――」
ブシュッ。
「はうっ!」
なんか出た。
めちゃヌレた。
「ああ、やっちまったかい」
かおにバケツいっぱいぶんくらいのお水をぶっかけられました。そんなかわいそーな女の子にやさしいことばをかけてくれるおねーさんがひとり。
「バカだねぇ」
「ヒドい!」
ぜんぜんやさしくなかった!
「魔法具だな。指定された呪文を唱えれば込められた魔法が発動するヤツだ」
「オレも見たことがあるぜ。粗悪品だと魔法が暴発することもあるみたいだ」
「人聞きの悪いこと言わないでくんない? ほら、そっちの子みたいに余計なこと言わないでお世話してやんなよ」
ハンカチでわたしの顔をフキフキしてくれるグウェンちゃん。うう、ありがとうそのやさしさが身にしみます。
「回数には限りがあるから、つぎの村についたら旅の魔術師に補充してもらうんだね」
振り返りながらそう告げるカニシュおねーさん。光の反射のせいか、いまは明るい亜麻色に見える髪がおおきく揺れて彼女の背中を覆い隠す。わたしはオトモダチからもらったブローチに目をやり、えがおになった。
「カニシュさぁーんあっりがとー!」
うしろ姿のまま、彼女はただ手をぷらぷらさせてわたしの声にこたえてくれた。
「ガーン!」
フレンド申請拒否られた!
「しょ、しょんなッ」
「そこまで気にすることかよ」
絶望顔を披露してみました。となりの男子がヒドいひと言を放ちつつ、そんな状況を見てあわてて手をふるおねーさん。
「ちがうよ。おともだちじゃなくて相棒になってみないか? って話」
「あいぼう?」
それもまた魅力的なひびき!
「見たところ、ここにいるメンツみんないいカラダしてるじゃない? もしかしたらサーカスの一員として大活躍できるんじゃないかって思ったのさ」
「はぇ~、サーカスのいちいん……」
ちょっとイメージしてみる。
おっきなブランコに飛び乗って、ゆあーんゆよーんして、向かい側からやってきたもうひとつのブランコ、そこで手をひろげて待つおねーさんの胸にダイブ。
(うん、わるくない)
「とくにあんた、サバイバル向きの野性的なカラダしてるじゃないか」
「え、あたし? えへへぇ~そうかな」
「おい、ビシェル」
「なんだスプリット」
「あれ褒めてるのか?」
「わからん」
「褒めてるのではないのですか?」
「グウェンにはそう聞こえんのかい?」
「言ってる意味はわからないですけど、グレースさんが野性的だというのは同意できます」
「ん? さっきからみんななに話してるの?」
「べつに」
「ほらほらよそ見しないで。悪い話じゃないと思うよ? なんてったってうちのサーカスは三食昼寝つきで実働二時間だしね」
「なん――だとッ!」
それはノドから手が出るほどの好条件! ってか彼女のセリフにみんな耳をピンとたててる。
「異世界人だったらあたいたちにしか使えないワザも使えるじゃない?」
「スキルのことか?」
カニシュは興味津々に尋ねる少年に笑顔を向けた。
「人気者になれるよ? この世界の人間にゃあスキルなんてないからね。やたら速く動けたり細かい動きができたり……おかげで、あたいはすっかりサーカスの花形さ」
「おぉぉ、すげえ」
「ありがたい提案だが、私たちは王都へ向かう途中なのでな」
夢見るいたいけな少年が目にしいたけを宿らせたタイミングで、異世界人の提案を異世界人じゃないひとが拒否りました。とたんに目をほそめてそっちを見る花形さん。
「あんたには聞いてないけど……まあ、考えておいてよ。あとおともだちになろうって提案? いいよ。なろうじゃないか。お近づきのしるしとしてね?」
言って、彼女はブローチをひとつこちらに差し出す。澄んだ海、あるいは晴れわたる大空ののようなキレイな青。涙のしずくのような形をして、ピンで布の服に縫い付けられるようになっている。
「水の魔法が込められたブローチさ。コレがありゃ道中の水には困らないよ」
「みずのまほう……これが」
「ああ、あまりイジらないほうが――」
ブシュッ。
「はうっ!」
なんか出た。
めちゃヌレた。
「ああ、やっちまったかい」
かおにバケツいっぱいぶんくらいのお水をぶっかけられました。そんなかわいそーな女の子にやさしいことばをかけてくれるおねーさんがひとり。
「バカだねぇ」
「ヒドい!」
ぜんぜんやさしくなかった!
「魔法具だな。指定された呪文を唱えれば込められた魔法が発動するヤツだ」
「オレも見たことがあるぜ。粗悪品だと魔法が暴発することもあるみたいだ」
「人聞きの悪いこと言わないでくんない? ほら、そっちの子みたいに余計なこと言わないでお世話してやんなよ」
ハンカチでわたしの顔をフキフキしてくれるグウェンちゃん。うう、ありがとうそのやさしさが身にしみます。
「回数には限りがあるから、つぎの村についたら旅の魔術師に補充してもらうんだね」
振り返りながらそう告げるカニシュおねーさん。光の反射のせいか、いまは明るい亜麻色に見える髪がおおきく揺れて彼女の背中を覆い隠す。わたしはオトモダチからもらったブローチに目をやり、えがおになった。
「カニシュさぁーんあっりがとー!」
うしろ姿のまま、彼女はただ手をぷらぷらさせてわたしの声にこたえてくれた。