いい情報
ファクトチェックはしっかりね!
「いい情報を入手したぞ」
みんなが集まって開口一番。オジサンはすぐさま本題にはいった。
「アイン・マラハの首都フラーで異世界人だけの集まりがあるらしい。それなりの規模で役所にも登録済みだそうだ」
「それはつまり、異世界人だけが加入できるギルドということか」
「ビシェルの言うとおりだ。ギルド自体は役所が管理してるが、とくに加入資格を要求されることはない。ただギルド側が加入者を絞ることはよくある。だいたいは団長が認めればみんななし崩し的に認めていくのが慣例だな」
「でもギルドってべつに入らなくても仕事できるじゃん」
「スプリット。おまえは商人たちと旅してる間は世話になったろう? 彼らが常に新しい情報を持ち歩いてるのはギルドに加入して、ほかの商人と頻繁に交流してるからなんだぞ?」
「へー」
「例の集落で遭遇したマモノの襲撃事件だってすぐ首都に伝わったはずだ。彼らはなにより情報の価値をわかっている」
「敵を知り己を知れば百戦危うからずというヤツだ」
「ふーん」
ビーちゃんがなんか難しいこと言って、スプリットくんが難しそうな顔で目の前のポテトをつまんで口にはこんだ。
ここは花の七草にある休憩所。みんなでざぶとんを敷いて長テーブルを囲んでいます。チコちゃんからヒミツのメニューを教えてもらったのでさっそく注文してみた。
ほそながくて、きいろくて、パリッとしてホクッとしておいしいたべものなーんだ?
「答えはフライドポテトでしたー」
「いきなりなんだよ」
少年が青い瞳を奇異の目にしてこっちに向けた。
「んーおいし!」
それにしてもこのフラポテ絶品である。ただひとつだけ難点があって、なんか料理がむずかしい? めんどう? だから注文できる機会は限られてるんだとか。今回はチコちゃんの懇意により実現できた作戦会議用おつまみタイム、ぜひ活用していきたい。
「アタイはめんどくさいこと考えるのは苦手だからな、そういうのはみんなに任せるよ」
あぐらをかいていたサっちゃんがその足を伸ばす。その先にあるオジサンの足に当たらないよう、サっちゃんはすこしだけおしりをうしろに動かした。
「で、そのギルドがどういい情報なんだって?」
「異世界人がたくさんいる」
「そんだけかよ」
「ああそれだけだ。だがマモノの目撃情報が多くなってきたいま、マモノを撃退するには異世界人の力が必要だ」
マモノ。
影のように現れて人々を襲うナゾのモンスターたち。それらはまっくろいまま多くのどうぶつの姿をとり、まるで生き物のように動く。明確な悪意があり、マモノによってスプリットくんの大切な人も命を落としてしまった。
人間に恐怖をふりまく存在だけど、なぜか異世界人の攻撃はふつうの人のそれより効果的になる。刃がつぶれた剣でも軽々と引き裂くことができるし、スキルと組み合わせれば一対一でまず負けることはない。それはこれまでの旅路で何度も経験したからこそ確信じみて言えることだ。
「マモノが首都に現れるなんてことはメッタにないだろうが、その時は彼らが頼みになるだろう」
「戦えるのか?」
「いろいろいるらしい。たたかいではなく首都で仕事をする者、狩猟に出る者、軍に混じって治安維持につとめる者、まあとにかく異世界人のサラダボウルみたいなものだ……キミたちも同じ異世界人。彼らとウマが合うだろうから首都フラーに到着したら会ってみると良いだろう」
「異世界人どうしを引き合わせたいのですか?」
「気にしすぎだよ。私はなにも考えちゃいない。ただ――」
グウェンちゃんになにかを含ませた視線をおくるオジサン。
「異世界人どうしのほうが仲良くなれるだろう? それに、同じ境遇の人間どうしならいろいろと話もしやすいんじゃないか?」
「それはまあ、確かに」
「異世界人どうしてつるむのも悪くないが、この世界の住人もおもしろいぞっていうのをな? 昔とちがって、今は複数のギルドに加入しても悪く言われんからこちらに誘う選択肢もある」
「おいおい、オレたちがギルドに加入してるなんて話聞いてねーぞ?」
「勘違いするな。お役所に情報登録してるだけでギルドに入ってるわけじゃない。まあ、私たちはまとめて登録したからひとつのチームという扱いになっているが」
なにか問題あるか? 的な表情のオジサン。文句はないけど満足でもないって顔のスプリットくん。
(んーなんか悪巧みしてそーなかんじがするー)
そうという目でみればそう見えるし、そうじゃないという目で見てもやっぱそうじゃないように見える。オジサンってたまに何考えてるんだかわからない時あるよねー。
「これがいい情報のひとつめだ。次がこいつ」
言って、オジサンはいちまいの紙をテーブルの上に置いた。妙に色褪せてるお役所さんが掲示板に「おしごと募集中!」でよく使う紙だ。
「近くの鉱山にモンスターが現れたらしい。その討伐依頼だ」
「鉱山?」
特定ワードにサっちゃんが反応した。興味深げにその紙を見下ろしなにかイメージしてるようだ。
「アタイが働いてるとことは逆方向だね。たしかに騒ぎがあったような話は聞いたけど、まさかマモノかい?」
「いや、マモノは決まって複数現れるがこいつは単独らしい。人間の何倍も大きくまるでそびえ立つ巨木のようだとか」
その紙には人とおなじような両手両足を備えた生き物が描かれている。けどその姿はいびつで、大きくて、オジサンの言うとおり何倍も巨大な異形の姿をしていた。
「幸い死者は出てないらしい。ただこいつのせいで作業が進まなくなって事業主がお困りのようだ」
「なるほどねぇ……で、この情報のどこがいいんだい?」
サっちゃんに問われ、同じ心境のみんなから注目されたオジサンはにんまりと唇をひらいた。
「報酬だ」
みんなが集まって開口一番。オジサンはすぐさま本題にはいった。
「アイン・マラハの首都フラーで異世界人だけの集まりがあるらしい。それなりの規模で役所にも登録済みだそうだ」
「それはつまり、異世界人だけが加入できるギルドということか」
「ビシェルの言うとおりだ。ギルド自体は役所が管理してるが、とくに加入資格を要求されることはない。ただギルド側が加入者を絞ることはよくある。だいたいは団長が認めればみんななし崩し的に認めていくのが慣例だな」
「でもギルドってべつに入らなくても仕事できるじゃん」
「スプリット。おまえは商人たちと旅してる間は世話になったろう? 彼らが常に新しい情報を持ち歩いてるのはギルドに加入して、ほかの商人と頻繁に交流してるからなんだぞ?」
「へー」
「例の集落で遭遇したマモノの襲撃事件だってすぐ首都に伝わったはずだ。彼らはなにより情報の価値をわかっている」
「敵を知り己を知れば百戦危うからずというヤツだ」
「ふーん」
ビーちゃんがなんか難しいこと言って、スプリットくんが難しそうな顔で目の前のポテトをつまんで口にはこんだ。
ここは花の七草にある休憩所。みんなでざぶとんを敷いて長テーブルを囲んでいます。チコちゃんからヒミツのメニューを教えてもらったのでさっそく注文してみた。
ほそながくて、きいろくて、パリッとしてホクッとしておいしいたべものなーんだ?
「答えはフライドポテトでしたー」
「いきなりなんだよ」
少年が青い瞳を奇異の目にしてこっちに向けた。
「んーおいし!」
それにしてもこのフラポテ絶品である。ただひとつだけ難点があって、なんか料理がむずかしい? めんどう? だから注文できる機会は限られてるんだとか。今回はチコちゃんの懇意により実現できた作戦会議用おつまみタイム、ぜひ活用していきたい。
「アタイはめんどくさいこと考えるのは苦手だからな、そういうのはみんなに任せるよ」
あぐらをかいていたサっちゃんがその足を伸ばす。その先にあるオジサンの足に当たらないよう、サっちゃんはすこしだけおしりをうしろに動かした。
「で、そのギルドがどういい情報なんだって?」
「異世界人がたくさんいる」
「そんだけかよ」
「ああそれだけだ。だがマモノの目撃情報が多くなってきたいま、マモノを撃退するには異世界人の力が必要だ」
マモノ。
影のように現れて人々を襲うナゾのモンスターたち。それらはまっくろいまま多くのどうぶつの姿をとり、まるで生き物のように動く。明確な悪意があり、マモノによってスプリットくんの大切な人も命を落としてしまった。
人間に恐怖をふりまく存在だけど、なぜか異世界人の攻撃はふつうの人のそれより効果的になる。刃がつぶれた剣でも軽々と引き裂くことができるし、スキルと組み合わせれば一対一でまず負けることはない。それはこれまでの旅路で何度も経験したからこそ確信じみて言えることだ。
「マモノが首都に現れるなんてことはメッタにないだろうが、その時は彼らが頼みになるだろう」
「戦えるのか?」
「いろいろいるらしい。たたかいではなく首都で仕事をする者、狩猟に出る者、軍に混じって治安維持につとめる者、まあとにかく異世界人のサラダボウルみたいなものだ……キミたちも同じ異世界人。彼らとウマが合うだろうから首都フラーに到着したら会ってみると良いだろう」
「異世界人どうしを引き合わせたいのですか?」
「気にしすぎだよ。私はなにも考えちゃいない。ただ――」
グウェンちゃんになにかを含ませた視線をおくるオジサン。
「異世界人どうしのほうが仲良くなれるだろう? それに、同じ境遇の人間どうしならいろいろと話もしやすいんじゃないか?」
「それはまあ、確かに」
「異世界人どうしてつるむのも悪くないが、この世界の住人もおもしろいぞっていうのをな? 昔とちがって、今は複数のギルドに加入しても悪く言われんからこちらに誘う選択肢もある」
「おいおい、オレたちがギルドに加入してるなんて話聞いてねーぞ?」
「勘違いするな。お役所に情報登録してるだけでギルドに入ってるわけじゃない。まあ、私たちはまとめて登録したからひとつのチームという扱いになっているが」
なにか問題あるか? 的な表情のオジサン。文句はないけど満足でもないって顔のスプリットくん。
(んーなんか悪巧みしてそーなかんじがするー)
そうという目でみればそう見えるし、そうじゃないという目で見てもやっぱそうじゃないように見える。オジサンってたまに何考えてるんだかわからない時あるよねー。
「これがいい情報のひとつめだ。次がこいつ」
言って、オジサンはいちまいの紙をテーブルの上に置いた。妙に色褪せてるお役所さんが掲示板に「おしごと募集中!」でよく使う紙だ。
「近くの鉱山にモンスターが現れたらしい。その討伐依頼だ」
「鉱山?」
特定ワードにサっちゃんが反応した。興味深げにその紙を見下ろしなにかイメージしてるようだ。
「アタイが働いてるとことは逆方向だね。たしかに騒ぎがあったような話は聞いたけど、まさかマモノかい?」
「いや、マモノは決まって複数現れるがこいつは単独らしい。人間の何倍も大きくまるでそびえ立つ巨木のようだとか」
その紙には人とおなじような両手両足を備えた生き物が描かれている。けどその姿はいびつで、大きくて、オジサンの言うとおり何倍も巨大な異形の姿をしていた。
「幸い死者は出てないらしい。ただこいつのせいで作業が進まなくなって事業主がお困りのようだ」
「なるほどねぇ……で、この情報のどこがいいんだい?」
サっちゃんに問われ、同じ心境のみんなから注目されたオジサンはにんまりと唇をひらいた。
「報酬だ」