隠密の本領発揮
地の文多めのほうがいいと聞いて
あと文体弄りました
あと文体弄りました
「もんだいです。わたしのジョブはなんでしょう?」
「それでヒソヒソ声のつもりか? さすがは森の音楽隊」
「なにそれ?」
「気にすんな」
街の一角にてそんな会話が繰り広げられた。
聞く人はいない。いたとしてもそれは我がパーティーメンバーのみ。あとシャツに短パンの非戦闘員チャイルドがひとり。
「イギーくん。今からでも遅くはありませんわ」
あんずちゃん気遣いからのお声かけ。
その先にどんな言葉があるか知ってる少年は言われる前に自己主張。
「ヤだ」
「子どもがこのような時間まで起きているものではない」
「こっちも子どもじゃん」
「このクソガキ」
となりに背ぇくらべ僅差のドロちん。それを指差すイギー少年。
ロリっ子ロリっ子とからかわれガチなドロちんですが、これでも立派な成人女性なのです。
そんなやりとりをジトぉっとした目で眺めつつ、さくらは茂みの中から対象への監視を再開した。
時は夜。星のきらめきが空に広がる夜更け。
ブッちゃんが言うようにお子ちゃまグッスリな時間帯。
おうちでのんびりしたいとこ。けど今はちょっとした茂みに潜みまして、イギーくんが突き止めたらしい盗賊のアジトらしき建物を遠目に監視しているところ。
レブリエーロ郊外に、円柱形のお城のような立派な塔が立っている。
背後にはレブリエーロ終端の証である堀が流れ、塔自身も小規模ながら小さな堀に囲われている。
アプローチするには正面の橋を渡るしかなさそうだ。
入口らしい大きな扉は両開きの木製で、両端には松明。見張りの類はなし。
立派なつくり。ハッキリ言って、とても盗賊のアジトには思えない。それよりもだれかさんのお城だよと言ってもらったほうがまだ説得力がある。
ごりっぱな建物を遠目に、ブッちゃんはハッキリとした疑いの眼差しを向けた。
「それよりイギー、真にここで相違ないのか?」
イギーくんはキッと睨み返す。子どもながらそのニュアンスに気付いたみたいだ。
月明かりが雲間からこぼれる。それが少年の顔に光差した。
「この図書館は国の直轄地だ。たしか私人が建設し、その後国有化されたはず」
「ここだよ。何人も入ってくの見たもん」
「なるほどな」
ふと、さくらが思い出したようにつぶやいた。
となりのあんずちゃんが訊く。
ちなみに、現在のポジションは塔から見ていちばん左にドロちん。
そのとなりにブッちゃん、イギーくん、さくら、あんずちゃん、そしてわたしとなっております。
「さくらさん、どうしました?」
「レブリエーロ市街地から市場、繁華街に住宅地。バラつきはあるが目撃情報と一致するな」
「では、やはりあそこがそうなのですね」
あんずは納得。
ブッちゃんは食い下がる。
そんな流れをドロちんが断ち切った。
「実際にそうなんだから仕方ないでしょ」
「真実は実際に目で見て確かめる。問題はどうやって侵入するかだが」
で、区切って、さくらは塔から見ていちばん右にいる人を見た。
だれでしょう? 正解はグレースちゃんでした!
「ん? なになに?」
「おまえ、いちおう隠密なんだよな?」
「そだよ!」
いちおうとはシツレーな。
わたしこう見えてイッパシの忍者ですぞ?
「あとおまえじゃなくてグレースちゃんだよ!」
「声がうるさい」
「てへっ」
「グレース、ちょっと行ってこい」
「はーい」
シュワッチ!
ガサガサと音をたて、わたしは茂みから飛び出し堀へと飛び降りた。
「ちょ、グレースさん!?」
「フットワーク軽いな」
「あのおねーちゃん大丈夫なの?」
「心配するな。ああ見えて優秀な隠密だ」
「口を閉じてればね」
後ろからそんな声が聞こえる。
夜間の静寂のせいで多少距離が遠のいてもまだ聞こえる。
「すごい音立てたよ?」
「案ずるな。周囲に人の気配はない」
「そういう問題じゃないでしょ」
「グレースさん……無事でいてくださいな」
取り残された面々。まずは主人公の帰還を期待しつつ、その後の作戦を練る段階。
に入るはずが、それ以前の疑問について口火を切るおねーちゃんがひとり。
「後はおれたちに任せて帰れ」
「うむ、保護者もさぞ心配していることだろう」
「ヤだ」
断固拒否。
「ブローチを取り返すまで絶対にヤだ」
「イギーくん……とても大切な物なんですね」
「同情はためにならねーぜ」
ジャマ者はいらない。
しかし少年の決意は固い。
両者のせめぎ合いからたどり着く妥協点。
「ここにいてもいいが、ジャマになったらすぐに送り返す。わかったな?」
おねーちゃんの気遣いに、少年はちょっぴり笑顔になった。
(んー……ほんとに盗賊のアジトなのかな?)
「スキル、水蜘蛛」
堀に飛び降り、そのまま水にドボンする前にスキルを発動する。
水中を移動するためのスキルだ。
足元に平たいボードのエフェクトが現れ、気持ちがつづく限り水面をスイスイ移動できる。
え? スキル名と詠唱名がぜんぜんちがうって?
んーとね、頭に浮かんだスキル名はクモさんだったけど、この感じなんかあめんぼっぽくない?
着地の衝撃音まで緩和してくれる便利スキル。今まで使うシーン少なかったけど、ようやく忍者っぽいことできそう?
(人の気配なしでござる。にんにん!)
人どころか動物やちっちゃい虫まで――生き物の気配すらない?
ちょっと不気味だけど、これなら正々堂々通路を通ってきても良かった気がする。
なるべく影になる位置を選んで移動する。
着実なる接近。たぶん他のみんなからもわたしの姿を視認できないだろう。
それほどまでに自信あります。だってオジサンに鍛えられたから。
(にしても、ここんとこ盗賊の相手ばっかりじゃないでしょうか?)
フラーを出てから盗賊と絡まない日がない。
堀の向こう側にたどり着き、わたしはスキルを解いて地面の上へ降り立った。
エフェクトが霧散する。すかさず橋の下へと潜り込む。
狙いはヒミツの入口だ。こういう場所は決まって隠し扉があるのだ。
っていう信念のもと橋下の石壁をコンコンしてみたけど残念。
(そういうのはなしか)
むぅ、楽しみにしてたのに。
しかたない、じゃあいつものように窓から侵入ということで。
(いー感じの窓はありませんかなー?)
忍者アイを駆使してめぼしき窓をリサーチング。
正面は木製の扉だけ。パッと見監視の目はないけど、ああいう扉はウラにかんぬきがあるはず。
ヘタに動かそうとするのはよくない。わたしは目を上方に向けた。
(あー……あるね)
人の頭くらい入れそうなヤツ。
ムリゲーに見えるけどコツさえ掴めばかんたん。
真の忍者は指先程度のスキマからでも侵入できるのだぁ。
「っていう冗談は置いといて」
侵入経路、決めました。
「それでヒソヒソ声のつもりか? さすがは森の音楽隊」
「なにそれ?」
「気にすんな」
街の一角にてそんな会話が繰り広げられた。
聞く人はいない。いたとしてもそれは我がパーティーメンバーのみ。あとシャツに短パンの非戦闘員チャイルドがひとり。
「イギーくん。今からでも遅くはありませんわ」
あんずちゃん気遣いからのお声かけ。
その先にどんな言葉があるか知ってる少年は言われる前に自己主張。
「ヤだ」
「子どもがこのような時間まで起きているものではない」
「こっちも子どもじゃん」
「このクソガキ」
となりに背ぇくらべ僅差のドロちん。それを指差すイギー少年。
ロリっ子ロリっ子とからかわれガチなドロちんですが、これでも立派な成人女性なのです。
そんなやりとりをジトぉっとした目で眺めつつ、さくらは茂みの中から対象への監視を再開した。
時は夜。星のきらめきが空に広がる夜更け。
ブッちゃんが言うようにお子ちゃまグッスリな時間帯。
おうちでのんびりしたいとこ。けど今はちょっとした茂みに潜みまして、イギーくんが突き止めたらしい盗賊のアジトらしき建物を遠目に監視しているところ。
レブリエーロ郊外に、円柱形のお城のような立派な塔が立っている。
背後にはレブリエーロ終端の証である堀が流れ、塔自身も小規模ながら小さな堀に囲われている。
アプローチするには正面の橋を渡るしかなさそうだ。
入口らしい大きな扉は両開きの木製で、両端には松明。見張りの類はなし。
立派なつくり。ハッキリ言って、とても盗賊のアジトには思えない。それよりもだれかさんのお城だよと言ってもらったほうがまだ説得力がある。
ごりっぱな建物を遠目に、ブッちゃんはハッキリとした疑いの眼差しを向けた。
「それよりイギー、真にここで相違ないのか?」
イギーくんはキッと睨み返す。子どもながらそのニュアンスに気付いたみたいだ。
月明かりが雲間からこぼれる。それが少年の顔に光差した。
「この図書館は国の直轄地だ。たしか私人が建設し、その後国有化されたはず」
「ここだよ。何人も入ってくの見たもん」
「なるほどな」
ふと、さくらが思い出したようにつぶやいた。
となりのあんずちゃんが訊く。
ちなみに、現在のポジションは塔から見ていちばん左にドロちん。
そのとなりにブッちゃん、イギーくん、さくら、あんずちゃん、そしてわたしとなっております。
「さくらさん、どうしました?」
「レブリエーロ市街地から市場、繁華街に住宅地。バラつきはあるが目撃情報と一致するな」
「では、やはりあそこがそうなのですね」
あんずは納得。
ブッちゃんは食い下がる。
そんな流れをドロちんが断ち切った。
「実際にそうなんだから仕方ないでしょ」
「真実は実際に目で見て確かめる。問題はどうやって侵入するかだが」
で、区切って、さくらは塔から見ていちばん右にいる人を見た。
だれでしょう? 正解はグレースちゃんでした!
「ん? なになに?」
「おまえ、いちおう隠密なんだよな?」
「そだよ!」
いちおうとはシツレーな。
わたしこう見えてイッパシの忍者ですぞ?
「あとおまえじゃなくてグレースちゃんだよ!」
「声がうるさい」
「てへっ」
「グレース、ちょっと行ってこい」
「はーい」
シュワッチ!
ガサガサと音をたて、わたしは茂みから飛び出し堀へと飛び降りた。
「ちょ、グレースさん!?」
「フットワーク軽いな」
「あのおねーちゃん大丈夫なの?」
「心配するな。ああ見えて優秀な隠密だ」
「口を閉じてればね」
後ろからそんな声が聞こえる。
夜間の静寂のせいで多少距離が遠のいてもまだ聞こえる。
「すごい音立てたよ?」
「案ずるな。周囲に人の気配はない」
「そういう問題じゃないでしょ」
「グレースさん……無事でいてくださいな」
取り残された面々。まずは主人公の帰還を期待しつつ、その後の作戦を練る段階。
に入るはずが、それ以前の疑問について口火を切るおねーちゃんがひとり。
「後はおれたちに任せて帰れ」
「うむ、保護者もさぞ心配していることだろう」
「ヤだ」
断固拒否。
「ブローチを取り返すまで絶対にヤだ」
「イギーくん……とても大切な物なんですね」
「同情はためにならねーぜ」
ジャマ者はいらない。
しかし少年の決意は固い。
両者のせめぎ合いからたどり着く妥協点。
「ここにいてもいいが、ジャマになったらすぐに送り返す。わかったな?」
おねーちゃんの気遣いに、少年はちょっぴり笑顔になった。
(んー……ほんとに盗賊のアジトなのかな?)
「スキル、水蜘蛛」
堀に飛び降り、そのまま水にドボンする前にスキルを発動する。
水中を移動するためのスキルだ。
足元に平たいボードのエフェクトが現れ、気持ちがつづく限り水面をスイスイ移動できる。
え? スキル名と詠唱名がぜんぜんちがうって?
んーとね、頭に浮かんだスキル名はクモさんだったけど、この感じなんかあめんぼっぽくない?
着地の衝撃音まで緩和してくれる便利スキル。今まで使うシーン少なかったけど、ようやく忍者っぽいことできそう?
(人の気配なしでござる。にんにん!)
人どころか動物やちっちゃい虫まで――生き物の気配すらない?
ちょっと不気味だけど、これなら正々堂々通路を通ってきても良かった気がする。
なるべく影になる位置を選んで移動する。
着実なる接近。たぶん他のみんなからもわたしの姿を視認できないだろう。
それほどまでに自信あります。だってオジサンに鍛えられたから。
(にしても、ここんとこ盗賊の相手ばっかりじゃないでしょうか?)
フラーを出てから盗賊と絡まない日がない。
堀の向こう側にたどり着き、わたしはスキルを解いて地面の上へ降り立った。
エフェクトが霧散する。すかさず橋の下へと潜り込む。
狙いはヒミツの入口だ。こういう場所は決まって隠し扉があるのだ。
っていう信念のもと橋下の石壁をコンコンしてみたけど残念。
(そういうのはなしか)
むぅ、楽しみにしてたのに。
しかたない、じゃあいつものように窓から侵入ということで。
(いー感じの窓はありませんかなー?)
忍者アイを駆使してめぼしき窓をリサーチング。
正面は木製の扉だけ。パッと見監視の目はないけど、ああいう扉はウラにかんぬきがあるはず。
ヘタに動かそうとするのはよくない。わたしは目を上方に向けた。
(あー……あるね)
人の頭くらい入れそうなヤツ。
ムリゲーに見えるけどコツさえ掴めばかんたん。
真の忍者は指先程度のスキマからでも侵入できるのだぁ。
「っていう冗談は置いといて」
侵入経路、決めました。