残酷な描写あり
R-15
第53話 『最後の晩餐⁉』
「どうしようスペス……まさかの年上なんだけど。
〝タッシェさん〟って呼んだほうがいいかのかな?」
「ボクも驚いたけど、説明してあげないと、長老さんが困ってるよ」
「あっ、そうね」
そう言うと、アルマは長老に言った。
「わたしは今年で、十六なんですよ」
「ああ!」
と今度は長老が声をあげた。
「そういえば、人族の子は成長が早いのでしたね」
「アールヴが遅いとも言えるよね――」
「スペスは黙ってて」とアルマは言った。
「……えっと、わたしたちは十六で成人、つまり大人としてみられます。
タッシェさんくらいの体格だと人族では五~六歳なので、
失礼ですけど――歳もそれくらいなのかと思ってました。ごめんなさい……」
「いえ、知らなかったのですから、いいのですよ。
アールヴは十代後半までは肉体的にも精神的にもあまり成長しないのです。
そのあと――だいたい二十歳すぎから伸びてきて、個人差もありますが三十歳前後で成人となります」
「そうなんですね。はじめて知りました」とアルマは言った。
「ですから、タッシェはまだ子供で、あなた方は大人。歳のことは気にしないで今までどおりに接していただけますか」
そう言って、長老は微笑む。
「わかりました。お気遣いありがとうございます」
アルマはそう言うと、あいだにいるタッシェを見た。
「――とはいっても年上かぁ……。わかっていても気になっちゃうわねぇ……」
「そう? ボクはあんまり気にならないけど」
「いいわねー、そのお気楽さがうらやましいわー」
「まあ、ボクは大抵のことを前向きに考えるからね」
「あれ〜? さっきまで、なんか拗ねてなかった〜?」
アルマがニヤニヤとスペスを見る。
「拗ねてないよ、ボクはつねに前向きに生きてるから」
スペスがすまし顔で強がるのを見て、アルマはさらに楽しそうに言った。
「おやおや~、そうだっけ~?」
「もちろんだよ――ボクは、例えこの場でアルマに生き埋めにされたとしても、埋めようとするアルマの幸せを願えるぐらいには前向きだからね」
「例えが重い!」
「えっ……ダメだった?」
「埋められながらそんなことを考えてたら、逆に引くわよ……」
「そうかなぁ……かっこいいと思ったんだけど」
「かっこいいとかいう以前に重すぎるのよ。もうちょっと軽い例えはないの?」
「重くなく……ね」
スペスがしばし考える。
「あっ、じゃあ、これならどう?」
「言ってごらんなさい」
「たとえアルマの体重が増えたとしても、ボクは気にしない!」
「それは、わたしが気にすんのよ! ――ていうか、女子にとって、その問題は、決して軽くない!」
「体重だけに?」
「やかましいわ!」
その大声で、また、まわりから視線が集まった。
「はぁ、もういいわよ……」とアルマは頭をふった。
「それより明日はどうする? いまから考えておいたほうがいいんじゃない?」
「そうだよね、明日はまず、早く起きないと」
「そうね、早めに〝神殿〟にいって調べなきゃいけないものね」
「いや、その前にこの集落を回らないと」
「なにか、話でも聞いたりするの?」
「いや、ボクと結婚してくれる子がいるか、細かくチェックしようと思って――」
と、スペスはまわりのアールヴ達を見まわす。
「いやぁアールヴって美人ぞろいだから、きっと迷っちゃうよね」
「えっ……スペスはここで、結婚する相手を見つけて永眠することにしたの?」
「それを言うなら〝永住〟でしょ。ボク死んでるじゃない、それじゃ」
「ううん、まちがってないわよ」
笑顔でアルマは言った。
「いますぐわたしが埋めてあげるから!
さあ、どこがいい? どこでも好きな場所をえらんでいいのよっ」
「なにを言ってるんだい」と、スペスは言った。
「ボクの好きな場所は、いつもアルマのとなりだよ」
「そうよね、わかった――」真顔でアルマはうなずく。
「つまり、いまこの場所ってことね。食事がおわったら、きっちり埋めてあげるね」
「ちょっとまって!」
「よかったわねー、最後の晩餐が楽しめて!」
「埋められる場所でする食事が、楽しめるわけないでしょ! というかボクを埋めたらアルマもここから帰れないよ」
「それもそっか……」
「そうそう。だから、やめておこうよ」
「じゃあ、いますぐ埋めるのはやめて、無事に帰れてからにしましょうか!」
「ボクが埋まるのは、確定してるのか……」
「安心して、三百年後のおなじ場所に埋めてあげる。スペスは埋められながら、私の幸せをねがってくれるんでしょ?」
「そこまでしてボクの望みを叶えようとしてくれるのはうれしいけれど――できれば生きたいです……」
「生きたい人は、真面目に帰る方法をかんがえましょうね!」
「でもさぁ……、ひとりくらいボクと結婚してくれる子がいるかもしれないよ? ねータッシェっ?」
と、スペスは膝の上のタッシェに顔を向ける。
「よし、わかった――」とアルマはうなずく。
「わたしがみっつ数えるあいだに、〝埋まる〟か〝帰るか〟選べ。いーちにー」
「帰りますっ!」
「よろしい。それじゃあ――」
ちょっと考えてから、アルマは訊いた。
「どうするの?」
〝タッシェさん〟って呼んだほうがいいかのかな?」
「ボクも驚いたけど、説明してあげないと、長老さんが困ってるよ」
「あっ、そうね」
そう言うと、アルマは長老に言った。
「わたしは今年で、十六なんですよ」
「ああ!」
と今度は長老が声をあげた。
「そういえば、人族の子は成長が早いのでしたね」
「アールヴが遅いとも言えるよね――」
「スペスは黙ってて」とアルマは言った。
「……えっと、わたしたちは十六で成人、つまり大人としてみられます。
タッシェさんくらいの体格だと人族では五~六歳なので、
失礼ですけど――歳もそれくらいなのかと思ってました。ごめんなさい……」
「いえ、知らなかったのですから、いいのですよ。
アールヴは十代後半までは肉体的にも精神的にもあまり成長しないのです。
そのあと――だいたい二十歳すぎから伸びてきて、個人差もありますが三十歳前後で成人となります」
「そうなんですね。はじめて知りました」とアルマは言った。
「ですから、タッシェはまだ子供で、あなた方は大人。歳のことは気にしないで今までどおりに接していただけますか」
そう言って、長老は微笑む。
「わかりました。お気遣いありがとうございます」
アルマはそう言うと、あいだにいるタッシェを見た。
「――とはいっても年上かぁ……。わかっていても気になっちゃうわねぇ……」
「そう? ボクはあんまり気にならないけど」
「いいわねー、そのお気楽さがうらやましいわー」
「まあ、ボクは大抵のことを前向きに考えるからね」
「あれ〜? さっきまで、なんか拗ねてなかった〜?」
アルマがニヤニヤとスペスを見る。
「拗ねてないよ、ボクはつねに前向きに生きてるから」
スペスがすまし顔で強がるのを見て、アルマはさらに楽しそうに言った。
「おやおや~、そうだっけ~?」
「もちろんだよ――ボクは、例えこの場でアルマに生き埋めにされたとしても、埋めようとするアルマの幸せを願えるぐらいには前向きだからね」
「例えが重い!」
「えっ……ダメだった?」
「埋められながらそんなことを考えてたら、逆に引くわよ……」
「そうかなぁ……かっこいいと思ったんだけど」
「かっこいいとかいう以前に重すぎるのよ。もうちょっと軽い例えはないの?」
「重くなく……ね」
スペスがしばし考える。
「あっ、じゃあ、これならどう?」
「言ってごらんなさい」
「たとえアルマの体重が増えたとしても、ボクは気にしない!」
「それは、わたしが気にすんのよ! ――ていうか、女子にとって、その問題は、決して軽くない!」
「体重だけに?」
「やかましいわ!」
その大声で、また、まわりから視線が集まった。
「はぁ、もういいわよ……」とアルマは頭をふった。
「それより明日はどうする? いまから考えておいたほうがいいんじゃない?」
「そうだよね、明日はまず、早く起きないと」
「そうね、早めに〝神殿〟にいって調べなきゃいけないものね」
「いや、その前にこの集落を回らないと」
「なにか、話でも聞いたりするの?」
「いや、ボクと結婚してくれる子がいるか、細かくチェックしようと思って――」
と、スペスはまわりのアールヴ達を見まわす。
「いやぁアールヴって美人ぞろいだから、きっと迷っちゃうよね」
「えっ……スペスはここで、結婚する相手を見つけて永眠することにしたの?」
「それを言うなら〝永住〟でしょ。ボク死んでるじゃない、それじゃ」
「ううん、まちがってないわよ」
笑顔でアルマは言った。
「いますぐわたしが埋めてあげるから!
さあ、どこがいい? どこでも好きな場所をえらんでいいのよっ」
「なにを言ってるんだい」と、スペスは言った。
「ボクの好きな場所は、いつもアルマのとなりだよ」
「そうよね、わかった――」真顔でアルマはうなずく。
「つまり、いまこの場所ってことね。食事がおわったら、きっちり埋めてあげるね」
「ちょっとまって!」
「よかったわねー、最後の晩餐が楽しめて!」
「埋められる場所でする食事が、楽しめるわけないでしょ! というかボクを埋めたらアルマもここから帰れないよ」
「それもそっか……」
「そうそう。だから、やめておこうよ」
「じゃあ、いますぐ埋めるのはやめて、無事に帰れてからにしましょうか!」
「ボクが埋まるのは、確定してるのか……」
「安心して、三百年後のおなじ場所に埋めてあげる。スペスは埋められながら、私の幸せをねがってくれるんでしょ?」
「そこまでしてボクの望みを叶えようとしてくれるのはうれしいけれど――できれば生きたいです……」
「生きたい人は、真面目に帰る方法をかんがえましょうね!」
「でもさぁ……、ひとりくらいボクと結婚してくれる子がいるかもしれないよ? ねータッシェっ?」
と、スペスは膝の上のタッシェに顔を向ける。
「よし、わかった――」とアルマはうなずく。
「わたしがみっつ数えるあいだに、〝埋まる〟か〝帰るか〟選べ。いーちにー」
「帰りますっ!」
「よろしい。それじゃあ――」
ちょっと考えてから、アルマは訊いた。
「どうするの?」