残酷な描写あり
R-15
第67話 『こなかったら許さない⁉』
木々のあいだを埋めるように密集していたゴブリン達がバラバラと散開し、叫び声を上げて走りはじめる。
「スペスっ! はやく逃げないとっ!」
アルマはそう言ってスペスを見たが、スペスはしばらく考えてから言った。
「やっぱり、ボクはもうちょっと後から行くよ」
「さっき逃げるって言ったじゃない!」
アルマは声を上げた。
「ここにいたら危ないのよ!」
「わかってる……」
落ちついた声でスペスは言った。
「でも、もう少しだけこの戦いを見ていきたいんだ。絶対にあとで行くから、アルマはタッシェと先に行っててくれ!」
スペスはそう言うと、首にしがみついていたタッシェを無理やりにはがし、アルマに預ける。
嫌がるタッシェが『オニイチャ!』とのばした手を、スペスは『ごめんね』とやさしく払いのけた。
声をあげて泣くタッシェを抱きしめて、アルマは戸惑いぎみにスペスを見る。
「どうして来ないなんて言うの⁉ ねぇ……いっしょに逃げましょ?」
「行かないだなんて言ってないよ。ただ、もう少しこの戦いを見たいんだ。
アールヴの人たちがどこまで戦えるのか。
悪魔の、特にあのデカいのが、どのくらい強いのか」
「そんなの見なくていいわよっ! ねぇ、逃げましょう! そんなことして、死んじゃったらどうするのよ!」
「大丈夫だよ。ボクはまだ死ねないんだ」
そうスペスは言った。
「――ボクはアルマを村に帰して、その胸を触らせてもらうんだからね。死んじゃったら約束が果たせない。だから必ず行くよ!」
真剣な顔で言うスペスに、アルマは悔しそうに目を伏せた。
言い合っている間にも、ゴブリン達のあげる声が近づいて来る。
「来て……くれるのよね?」アルマが訊く。
「もちろんだよ」スペスが答えた。
「わかった……!」
アルマは、泣きじゃくるタッシェを抱えて、うなずいた。
「そのかわりっ、絶対に来てよっ! こなかったら許さないからねっ!」
「わかってるっ! それじゃあ!」
短く手を振り、スペスはアールヴ達の方へ駆けていった。
見送りながら唇を噛んだアルマは、くるりと向きを変え、スペスと反対へ走りだす。
肩から身を乗りだしたタッシェが、何度も後ろへ「オニイチャ!」と叫んでいた。
「スペスっ! はやく逃げないとっ!」
アルマはそう言ってスペスを見たが、スペスはしばらく考えてから言った。
「やっぱり、ボクはもうちょっと後から行くよ」
「さっき逃げるって言ったじゃない!」
アルマは声を上げた。
「ここにいたら危ないのよ!」
「わかってる……」
落ちついた声でスペスは言った。
「でも、もう少しだけこの戦いを見ていきたいんだ。絶対にあとで行くから、アルマはタッシェと先に行っててくれ!」
スペスはそう言うと、首にしがみついていたタッシェを無理やりにはがし、アルマに預ける。
嫌がるタッシェが『オニイチャ!』とのばした手を、スペスは『ごめんね』とやさしく払いのけた。
声をあげて泣くタッシェを抱きしめて、アルマは戸惑いぎみにスペスを見る。
「どうして来ないなんて言うの⁉ ねぇ……いっしょに逃げましょ?」
「行かないだなんて言ってないよ。ただ、もう少しこの戦いを見たいんだ。
アールヴの人たちがどこまで戦えるのか。
悪魔の、特にあのデカいのが、どのくらい強いのか」
「そんなの見なくていいわよっ! ねぇ、逃げましょう! そんなことして、死んじゃったらどうするのよ!」
「大丈夫だよ。ボクはまだ死ねないんだ」
そうスペスは言った。
「――ボクはアルマを村に帰して、その胸を触らせてもらうんだからね。死んじゃったら約束が果たせない。だから必ず行くよ!」
真剣な顔で言うスペスに、アルマは悔しそうに目を伏せた。
言い合っている間にも、ゴブリン達のあげる声が近づいて来る。
「来て……くれるのよね?」アルマが訊く。
「もちろんだよ」スペスが答えた。
「わかった……!」
アルマは、泣きじゃくるタッシェを抱えて、うなずいた。
「そのかわりっ、絶対に来てよっ! こなかったら許さないからねっ!」
「わかってるっ! それじゃあ!」
短く手を振り、スペスはアールヴ達の方へ駆けていった。
見送りながら唇を噛んだアルマは、くるりと向きを変え、スペスと反対へ走りだす。
肩から身を乗りだしたタッシェが、何度も後ろへ「オニイチャ!」と叫んでいた。