残酷な描写あり
R-15
第74話 『うそでしょ、なんでよ⁉』
「あっ、ゴメン!」
思わずぱっと離れると、スペスは歯を食いしばって、右手をおさえていた。
「なに⁉︎ 怪我をしてたのっ⁉」
「ちょっと火傷したみたいで、だんだん痛くなってきた」
そう言ってスペスが見せた右の手は、真っ赤に腫れていた。
「けっこう酷いじゃない、なんで黙ってたのよ!」
「いや、あんまり痛くなかったから平気かなって」
「バカね! 火傷は早めに治療しないと酷くなるのよ。はい! 袖をまくって手を出して!」
言われた通りに出されたスペスの手を、アルマはガッチリとつかむ。
「いてっ」とスペスが言ったが、アルマは「ガ・マ・ン!」と言って魔法をかける。
「気をつけなさいよ、利き手がつかえなくなったら、いろいろ不便なんだから……」
「わかったよ」とスペスがうなずく。
「はい、もういいわよ――」
しばらくしてアルマは手をはなした。
「あとは自然に治るとおもうけど、無理はダメだからね」
「ありがとう、楽になったよ」
「どういたしまして」と言ったアルマは、恥ずかしそうにモジモジとしだす。
「ね、ねぇ……、こんな時なんだけど……なにか食べない? 安心したせいか、急にお腹が空いてきちゃって……」
「いいね」とスペスが同意した。「そういえば、お昼に食べたきりだったもんね」
ふたりで食料袋を開け、中をのぞき込む。
「パンはいいとして、こっちの実は? このまま食べられるのかしら?」
「入れてあるんだから、平気なんじゃない? 食べてみればわかるよ」
そう言ってスペスは指の先くらいの実をひとつ口に入れる。カリコリと噛む音がした。
「どう?」
「うーん……食べれないことはないけど、あんまりおいしくない……」
「こんな時だし、贅沢は言えないわよ」
そう言って、アルマも実を口にする。
「ねぇ……いま、どのくらいの時間なのかしら」
「ボクがここについた頃に、太陽が山に入りそうになってたから、まだしばらくは暗くならないだろうね」
「メイランさんは、間に合いそうもないね……」
パンをかじって、アルマは言った。
「まだ、半分も行ってないだろうからね」
スペスが答える。
「それに、たとえメイランさんが来てくれても、あのトロルには勝てるかわからないし……」
「なにいってるの、勝てるわよ! メイランさんなら、あんなの絶対楽勝ぽんよ!」
「どうして、そう思うの?」スペスが訊いた。
「勘よ! アルマ氏がそう言ってるの!」
「そっか……アルマ氏が言うんじゃ、信じるしかないな」
そう言って笑ったスペスが、さてと、と立ちあがった。
「どうしたの? トイレ?」
と言って、アルマは気がついた。
「そ……そういえば、ここってトイレはどうしたらいいのかな? べ、べつに、今すぐしたいってわけじゃないんだけど……いずれそうなった時に……ね」
「えっ、地面に穴でも掘ってすれば?」スペスが言った。
「ここでっ⁉」
「奥の方ですればいいでしょ、暗いから見えないよ」
「そうだけど、そうじゃなくてぇ〜」
アルマは恥ずかしそうに言う。
「その……音とか、においとか……いろいろと~」
「ん? みんな寝てるんだし、そんなの気にしなくて良くない?」
「なに言ってるのよ、スペスがいるでしょ!」
「それなら心配いらないよ」
とスペスは言った。
「ボクは、また出てくるからさ」
「外に出ててくれるの? それでも、臭いが……」
アルマがゴニョゴニョしていると、スペスは、ちがうちがう、と手を振った。
「ボクはまた外に行ってくる。あんまり戦力にはなれないけど、ボクでもゴブリンくらいは、倒せそうだからね」
そう言って、スペスは荷物をまとめはじめた。
「う、うそでしょ、なんでよ⁉」
意味がわからず、思わずアルマは立ちあがった。
思わずぱっと離れると、スペスは歯を食いしばって、右手をおさえていた。
「なに⁉︎ 怪我をしてたのっ⁉」
「ちょっと火傷したみたいで、だんだん痛くなってきた」
そう言ってスペスが見せた右の手は、真っ赤に腫れていた。
「けっこう酷いじゃない、なんで黙ってたのよ!」
「いや、あんまり痛くなかったから平気かなって」
「バカね! 火傷は早めに治療しないと酷くなるのよ。はい! 袖をまくって手を出して!」
言われた通りに出されたスペスの手を、アルマはガッチリとつかむ。
「いてっ」とスペスが言ったが、アルマは「ガ・マ・ン!」と言って魔法をかける。
「気をつけなさいよ、利き手がつかえなくなったら、いろいろ不便なんだから……」
「わかったよ」とスペスがうなずく。
「はい、もういいわよ――」
しばらくしてアルマは手をはなした。
「あとは自然に治るとおもうけど、無理はダメだからね」
「ありがとう、楽になったよ」
「どういたしまして」と言ったアルマは、恥ずかしそうにモジモジとしだす。
「ね、ねぇ……、こんな時なんだけど……なにか食べない? 安心したせいか、急にお腹が空いてきちゃって……」
「いいね」とスペスが同意した。「そういえば、お昼に食べたきりだったもんね」
ふたりで食料袋を開け、中をのぞき込む。
「パンはいいとして、こっちの実は? このまま食べられるのかしら?」
「入れてあるんだから、平気なんじゃない? 食べてみればわかるよ」
そう言ってスペスは指の先くらいの実をひとつ口に入れる。カリコリと噛む音がした。
「どう?」
「うーん……食べれないことはないけど、あんまりおいしくない……」
「こんな時だし、贅沢は言えないわよ」
そう言って、アルマも実を口にする。
「ねぇ……いま、どのくらいの時間なのかしら」
「ボクがここについた頃に、太陽が山に入りそうになってたから、まだしばらくは暗くならないだろうね」
「メイランさんは、間に合いそうもないね……」
パンをかじって、アルマは言った。
「まだ、半分も行ってないだろうからね」
スペスが答える。
「それに、たとえメイランさんが来てくれても、あのトロルには勝てるかわからないし……」
「なにいってるの、勝てるわよ! メイランさんなら、あんなの絶対楽勝ぽんよ!」
「どうして、そう思うの?」スペスが訊いた。
「勘よ! アルマ氏がそう言ってるの!」
「そっか……アルマ氏が言うんじゃ、信じるしかないな」
そう言って笑ったスペスが、さてと、と立ちあがった。
「どうしたの? トイレ?」
と言って、アルマは気がついた。
「そ……そういえば、ここってトイレはどうしたらいいのかな? べ、べつに、今すぐしたいってわけじゃないんだけど……いずれそうなった時に……ね」
「えっ、地面に穴でも掘ってすれば?」スペスが言った。
「ここでっ⁉」
「奥の方ですればいいでしょ、暗いから見えないよ」
「そうだけど、そうじゃなくてぇ〜」
アルマは恥ずかしそうに言う。
「その……音とか、においとか……いろいろと~」
「ん? みんな寝てるんだし、そんなの気にしなくて良くない?」
「なに言ってるのよ、スペスがいるでしょ!」
「それなら心配いらないよ」
とスペスは言った。
「ボクは、また出てくるからさ」
「外に出ててくれるの? それでも、臭いが……」
アルマがゴニョゴニョしていると、スペスは、ちがうちがう、と手を振った。
「ボクはまた外に行ってくる。あんまり戦力にはなれないけど、ボクでもゴブリンくらいは、倒せそうだからね」
そう言って、スペスは荷物をまとめはじめた。
「う、うそでしょ、なんでよ⁉」
意味がわからず、思わずアルマは立ちあがった。